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裁判例

任意組合の組合員の組合事業に係る利益の計算について

掲載:2012-10-16

税目
所得税
裁判年月日
東京高裁平成23年8月4日判決

納税者は,未公開会社や中小企業等に対する投資による利益を得ることを目的として、任意組合及び投資事業有限責任組合(以下,「本件各組合」という」)に対する出資を行い,本件各組合から生じた利益又は損失について,所得税基本通達36・37共-20に定める各計算方法のうち純額方式を適用して所得税の確定申告を行ったところ,課税庁は,純額方式によると,本来は分離課税となる株式等に係る譲渡所得が総合課税所得して計算され,その結果,損益通算が行われるなど課税上の弊害があるので,原則である総額方式によるべきであるとして更正処分等を行った。

 

納税者はこれを不服として提訴した。

判決要旨は以下の通り。

 

本件通達は,総額方式によることを原則とし,例外的に,継続適用を前提として純額方式によることを認めるものであり,このような計算方法の取扱いは課税実務の取扱いとして定着しているところ,上記の計算方法がどうあるべきかについては,所得税法の規定の文言及び解釈により一義的に決まらないことに照らし,所得税法の解釈を踏まえて所得計算方法の簡便化を図ったものとして合理性を有するものである。

 

本件通達は,継続して純額方式により計算している場合には,「その計算を認めるものとする」と定めており,継続適用を要件としているほかは特段の要件を定めていないものであって,本件通達に定めていない要件(総額方式による計算が煩雑・困難であるなどの合理的理由があることや課税上の弊害がないこと)を,通達の改正をしないまま解釈により付加することは,租税法律主義の趣旨に抵触する。

 

上記の通り,納税者の主張を認めました。

尚,平成24年8月30日付で上記所得税基本通達36・37共-20は一部改正され,同日以後に締結される契約については,改正後の内容が適用されることになります。

 

20110804