HOME >BLOG
給与と報酬の区分をめぐる問題
社会保険の負担が大変だとか、源泉徴収事務が煩雑で面倒だ、といった理由から、これまで社員に支払っていた給与を、業務請負契約などの報酬に変更して支払おうとする会社がたまにありますが、これは一歩間違うと痛い目にあいます。
給与とは 「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得」 と規定され、いわゆる雇用契約に基づくものです。
一方、報酬とは 「農業、漁魚・・・その他のサービス業のほか、対価を得て継続的に行う事業から生ずる所得」 と規定され、いわゆる請負契約に基づくものです。
この場合において、雇用契約に該当するのか請負契約に該当するのかは、実態に即して判断され、会社の都合で決まるものではありません。
区分の基準としては次の二つが重要視されます。
①非独立性
例えば、まだ引き渡しを終えていない完成品が不可抗力のため滅失してしまった場合において、その者が権利
として報酬の請求をなすことができるか否か。できる場合には給与としての要素が強いと思われます。
②従属性
例えば、契約の内容から他人の代替が可能である場合には、報酬としての要素が強いと思われます。
また、仕事の遂行に当たり、個々の作業について指揮監督を受けずに自己の裁量において業務を行う場合に
は事業としての要素が強いと思われます。
どちらも所得税を源泉徴収する必要がありますが、給与の場合はその支払金額と扶養者の数に応じ、一覧表に規定する所得税を徴収します。
一方、報酬の場合は、たいがいの場合は支払金額の10%の所得税を徴収します。
そして、もっとも問題となるのが消費税です。
会社が決算で納税する消費税は、売上に係る預かり消費税から、支払いに係る仮払い消費税を控除することによって算出するのですが(仮払い消費税の方が大きかったら還付となります)、この場合において、給与は 「非課税仕入」に該当し、控除することができません。
一方、報酬は 「課税仕入」 に該当し、控除することができます。
両者の差は、単純に考えれば給与の支払金額の5%ですから、かなり違うことになります。
当然、控除することができる報酬の方が納税額は少なくなるのですが、それを目当てに会社の判断で給与に該当するものを報酬として消費税の計算を行うと、当然のことながら税務調査で否認され、過少申告加算税や延滞税などの余計な税金まで課せられてしまいます。
あくまでも実態で判断するものであって、会社の都合で判断するものではありませんので、注意が必要です。
新寄付金税制について ~税務調査で寄付金認定された場合~
平成22年度の税制改正で寄付金に対する税制上の取扱いが改正され、法人による完全支配関係にある
内国法人間の寄付については、
寄付をする内国法人においては損金不算入
寄付を受ける内国法人においては益金不算入
となりました。
この改正に関する法人税通達9-4-2の5の当局による解説では、 「無利息貸付などの金銭の授受を伴わない経済的利益の供与を受けた場合であっても、その利益供与が法人税法上の寄付金に該当する場合には、支払利息などを損金算入するとともに、同額の受贈益を益金に計上する両建て経理を行った上で、この受贈益が益金不算入になる。」 と記述してあります。
要するに、無利息で金銭の貸付を受けた場合であっても、支払利息に相当する金額を算定して、
(借方)支払利息 (貸方)受贈益
という仕訳を計上して、この受贈益が益金不算入だということです。
ここで、疑問なのが、平時は上記の仕訳を計上していなくて、税務調査でそれを指摘された場合です。
きちんと仕訳をしていれば益金不算入の取扱いを受けることができたのに、仕訳をしてない状態で税務調査の際にそれを指摘された場合、益金不算入の取扱いが受けられなくなってしまうのか?
結論としては心配不要です。
それは、新寄付金税制では確定決算や確定申告において上記のような両建て経理が求められているわけではないので、仮に税務調査で上記のような指摘があった場合であっても、きちんと益金不算入の規定の適用が受けられます。
税制改正の影響で保育料や健康保険料の負担も増加するかも知れません。
平成22年度税制改正において、子ども手当の導入に伴い、所得税と個人住民税の扶養控除の一部(0歳~15歳)が平成23年分から廃止されることとなりました。
また、高校授業料の実質無償化に伴い、やはり所得税と個人住民税の扶養控除の一部(16歳~18歳)が平成23年分から減額されることになりました。
これにより、所得税と住民税の負担が増加することになるわけですが、税金だけでなく、健康保険料や保育料の負担も増加する可能性があります。
といいますのは、多くの市区町村は国民健康保険料の保険料を、個人住民税の約1.2倍~1.5倍くらいで計算しています。
また、保育園の保育料や公営住宅の家賃も、個人住民税に連動させて負担額を決定している場合がほとんどです。
そうしますと、必然的に個人住民税の負担が増えれば、それに連動して国民健康保険の保険料や保育園の保育料が値上がりする、というわけです。
これは大変だ、ということで、現在、政府税制調査会では 「控除廃止の影響に係るPT(プロジェクトチーム)」 を立ち上げて、行政サービスの負担増を防ぐ対処案をまとめています。
マンション管理組合でも申告が必要になる場合があります。
区分所有マンションは区分所有者全員で管理組合を構成しなければなりません。
このとき、一般的には管理組合は法人格を持たない 「人格のない社団」 である場合が多いのですが、区分所有法は 「管理組合法人」 を設立することを認めています。
そして、どちらの場合も収益事業を営んでいる場合には税金の申告が必要になるのですが、管理組合が申告しなければならなくなる一番多いケースは駐車場を外部の人に賃貸している場合です。
マンションの駐車場を利用している人が区分所有者だけであれば問題ないのですが、空きが出て区分所有者に借りる人がいない場合、近隣の区分所有者以外の人に賃貸する場合があります。
そうすると、その区画だけの収入ではなく、他の区画の駐車場収入を含めて全体が申告の対象となります。
例えば、10台駐車場のあるマンションで、その全てを区分所有者が利用しているのであれば申告は必要ありませんが、1台でも区分所有者以外の外部の人に賃貸すると、10台分全ての収入が申告の対象となります。
1台分だけ申告すれば良い、ということにはならないので注意が必要です。
駐車場に空きがあり、管理費補てんのために外部に賃貸する場合には、このような課税の問題に留意する必要があります。
社長借入金がある会社でそのまま相続が発生すると残された家族が大変なことになります。
中小企業では金融機関からの融資が容易でない場合が多く、仕方なく社長が会社に資金を貸し付けることが多いのですが、これが多額に残ったまま社長にもしものことがあると、残された家族は大変なことになります。
会社の決算書に記載されている社長からの借入金は、社長から見れば貸付金です。
すなわち資産です。これは立派な相続財産です。
社長が会社にお金を貸し付けているということは、たいていは会社の営業成績が悪く、会社の株価評価は低いはずです。にもかかわらず、社長借入金の全額が相続財産です。
しかも、会社の営業成績が悪いのですから、返済の目処は当然立ちません。
このような状況で相続が発生すると、ほとんど回収できない貸付金に対して相続税が課税され、残された家族は納税資金不足に陥ります。
よって、社長借入金はそのまま放置しておくと大変なことになります。
ではどうすれば良いのかというと、以下のような解決策が考えられます。
①役員報酬を減額して、借入金の返済に充当する。
例えば、毎月100万円の役員報酬をとっていたのであれば、役員報酬を50万円に減額して、別途50万円を借入
金の返済として社長に支払います。
そうすれば手取りは変わらず、源泉所得税や社会保険料を減らすこともできます。
②債務免除益を計上する。
どうせ回収できない貸付金であるならば、思い切って債務免除してしまうこともできます。
債務免除をすると会社側で特別利益を計上する必要がありますが、これまでの欠損金が多額にある場合など
は、結果として法人税は課税されません。
③デッド・エクイティ・スワップをする。
会計上、社長借入金を資本金に振り替えてしまう方法です。
社長の貸付金という財産が株式に変わりますが、評価額は低いことが多いので相続税対策になります。
④不動産を社長が買い取る。
会社で所有している不動産がある場合には、借入金の返済にこれを充当する方法です。
上記のどの方法も一長一短がありますので、実行には顧問税理士との相談が必要です。