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就業規則は大丈夫ですか? (その3)
<承前>
就業規則の作成例として参考になりそうなことを列挙します。
(例1)
まずは入社時の必要書類です。
雛型就業規則ですと必要書類の提出期限を「入社日から14以内」としているケースが多いですが、入社に必要な書類なのですから遅くても入社日までに提出してもらうのが当然だと思います。
よって、次に掲げる書類は入社日までに提出すること、というような規定にしましょう。
・誓約書
・身元保証書(保証人を1人つけてもらいましょう)
・住民票
・健康診断書
・源泉徴収票(前職がある方)
・雇用保険被保険者証
・年金手帳
・給与所得者の扶養控除等申告書(全員)
・卒業証明書(大学や短大など)
・運転免許証
・各種資格試験の合格通知書の写し 等
(例2)
試用期間3か月として採用した従業員を本採用しない場合に、試用期間の終了を契約期間の終了と勘違いしている会社がたまにあります。
契約期間を定めていない場合は、試用期間中であっても「期間の定めのない労働契約」を締結していることになりますので、試用期間終了間際になって明日から来なくていいと通知すると、それは突然解雇通知をしたことと同じです。よって、この場合は解約予告手当を支払う義務が生じます。
但し、試用期間中で、かつ、雇い入れてから14日以内の場合は解約予告手当を支払わずに即時解雇することができます。
よって、トラブルを避けるためにも、解雇事由の列挙とともに試用期間中の取扱いを就業規則に明記しておくとよいでしょう。
(例3)
その2でちょっと触れた突然出社しなくなったアルバイトのケースですが、このような場合は退職事由に該当する旨を就業規則に規定しておくと一定の効果があります。
以下退職事由(解雇事由)の例示です。
・無断もしくは正当な理由なく欠勤は連続30日以上続いたとき。
・出勤常ならず、改善の見込みがないとき。
・刑事事件で有罪判決を受けたとき。
・重要な経歴を偽って採用されたとき。
・故意または重大な過失により災害または営業上の事故を発生させ、会社に重大な損害を与えたとき。
・会社の許可を得ず、会社に在籍のまま他の事業の経営に参加したりまたは労務に服し、若しくは事業を営むとき。
・会社の許可を得ず、職務上の地位を利用し第三者から報酬を受け、若しくはもてなしを受けるなどの自己の利益を図っ
たとき。
・暴行、脅迫その他不法行為を行い、著しく会社の職員としての対面を汚したとき。
・私生活上の非違行為や会社に対する中傷誹謗などによって会社の名誉信用を傷つけ、業務に悪影響を及ぼすような行
為があったとき。
次回以降に続きます。
国民年金を滞納すると財産を差し押さえられてしまうかも知れません。
昨日報道されていましたのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、国民年金を滞納し続けると財産を差し押さえられてしまうかも知れません。
厚生労働省は27日、厚生年金と国民年金の保険料を滞納している事業所、個人のうち、特に悪質なケースについては国税庁に委任し、強制徴収に踏み切る方針を決めたそうです。早ければ10月から実施する予定とか。
数年前に、某女優が国民年金の広告ポスターに起用されながらも自身が国民年金を支払っていなかったことが発覚し、これを発端に国民年金の未納が社会問題化したことがありました。
厚生労働省の発表によりますと、平成22年6月現在の国民年金の納付率はたった54%です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000mmb5.html
一方、国税庁発表の平成21年度の滞納発生割合はわずか1.8%で、98%以上の納付率があることになります。
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2010/sozei_taino/index.htm
どちらも法律で納付が義務付けられているにも関わらず、こんなにも納付率に差があるのは何故でしょうか。
年金制度への不信感が根強いですとか理由は色々あると思いますが、一番の理由は徴収に対する意識の違いではないかと私は思います。
税務署の職員は国税庁という組織の中で配属転換や転勤がありますが、どこへいっても基本的には税を徴収する立場にあります。
ところが、各市町村の国民年金の担当者は、配属転換や転勤があると必ずしも年金担当になるとは限りません。昨日まで福祉を担当していた人もいるでしょうし、土木や教育の担当だった人もいるでしょう。
誰でも支払いを催促をするのは気持ちの良いものではありませんし、ましてや昨日まで福祉課で低所得のため生活がままならない人の世話をしていた人が、年金課に異動したからといってすぐに同じ人に未納の年金を支払えとは言えないのではないでしょうか。
税と社会保険は似て非なるものだと私は思いますが、徴収に関してはどこかの省庁が一元化して実行する方が効率的だと思います。
特に法人住民税と法人事業税は国税である法人税に連動して計算しますので、各地方公共団体に専属の担当者を置く意味はほとんどありません。これらの地方税職員を削減できれば、各地方公共団体の財政は幾分かは改善するはずです。
今回の、厚生労働省が国民年金の徴収を国税庁に委任するという報道を受け、上記のようなことを考えてみました。
民主党による次回事業仕分けの際には、是非、検討して頂きたいものです。
就業規則は大丈夫ですか? (その2)
<承前>
雛型就業規則が怖い理由
(例1)
従業員が病気をして長期療養が必要となった場合に、その間の雇用を保障する制度として「病気休職制度」というものがあり、たいていの雛型就業規則にも記載されています。これは法律で定められた絶対的記載事項ではありません。
仮に、雛型就業規則に「休職可能期間1年」と記載されていて、それをそのまま自社の就業規則としてしまったら、従業員3人しかいない会社であっても1年間の休職が可能となり、1年後は復職を認めなければなりません。
大企業ならいざ知らず、中小企業にそんな体力があるでしょうか・・・。
(例2)
A社は秋の中途採用で弁護士資格を持っているという人を採用しました。会社は入社後すぐに大学の卒業証明書と弁護士試験の合格証書を持ってくるように指示しましたがなかなか持ってきません。業を煮やした総務部長が強く提出を求めると、「就業規則には入社後14日以内に必要書類を提出すること」と書いてあるという理由で14日目に提出します、とのこと。自社で定めたルールにそう書いてあるので総務部長もその日まで待つことにしました。ところが・・・その従業員は14日目に忽然と姿を消しました。会社の重要書類とともに・・・。
雛型就業規則ではなく、「入社日までに必要書類は提出すること」と規定しておけば防げた不正事件です。
(例3)
B社は営業に車を使用していました。運転免許証の有無は入社時に履歴書で確認していましたが、現物の確認やコピーの提出までは求めていませんでした。
先日、ある社員が人身事故を起こしました。しかも、無免許運転でした。その社員は5年も前に免許を取り消されていたそうです。就業規則で運転免許証の提出を定めていれば防げた事故でした。会社も監督責任を問われ、損害賠償が重くのしかかっています。
(例4)
社員が2週間後に退職したいと申し出てきました。2週間後なんていくらなんでも非常識だと社長は怒りましたが、「しかし社長、就業規則には「退職の際は14日前までに申し出ること」と書いてありますよ。」と反論されてしまいました。雛型就業規則をよく読みもしないでそのまま自社の就業規則にしてしまったためです。
(例5)
退職してゆく従業員の中には有給休暇を全て消化しようとする人がいます。引き継ぎが完璧に完了していればそれほど問題となりませんが、往々にして、退職してゆく従業員は「引き継ぎは完了した」と主張し、会社側は「まだ完了していない」とトラブルになりがちです。
そこで、就業規則に、「引き継ぎは○○部長の承認を得て完了する」としておけば、こうしたトラブルはある程度防げます。雛型就業規則ではこうした規定はまず記載されていません。
上記以外にも雛型就業規則による弊害は多々あります。
これを読んで心配になってきた方は、是非、自社の就業規則を読み返してみて下さい。
改訂が必要な事項があればお気軽にご相談ください。お手伝いします。
参考文献
下田直人『人が動く!組織が変わる!「勝ち組企業」の就業規則』(PHPビジネス新書・2008年)
就業規則は大丈夫ですか? (その1)
社会保険労務士の先生と話をしていてよく話題になるのですが、就業規則はきちんとしておかないと怖いです。
就業規則が無かったり、有っても不十分だったりすることのリスクはかなり大きいです。
今後、何回かにわけて就業規則のお話をします。
就業規則の作成は労働基準法に定められていて、10人以上の労働者(パートやアルバイトを含む)がいる場合には、全ての会社が就業規則の作成と労働基準監督署への提出が義務付けられています。
では、10人未満の会社は就業規則が無くても良いのか、となりますが、そんなことはありません。
労働者が10人未満であっても就業規則が無いことのリスクは大きいですので、労働者の人数にかかわらず就業規則はきちんと作成すべきです。
就業規則が無かったために、或いはあっても内容が不十分だったために会社が損害を被ったというケースは枚挙にいとまがありません。
具体例は後述することにしますが、就業規則を作成する上で絶対にやめるべきなのが、ネットや書籍などから就業規則の雛型を入手し、適当に手直しして就業規則を作成したつもりになることです。
こんな就業規則でしたら無いほうがマシです。
雛型就業規則で自社の就業規則を作成したつもりになっているとしたら、きちんと見直しをして作成し直すことをお勧めします。
参考文献
下田直人『人が動く!組織が変わる!「勝ち組企業」の就業規則』(PHPビジネス新書・2008年)
会社解散後、社長に第2次納税義務が生じるかも知れません。
平成22年度の税制改正において、清算所得課税は廃止され、平成22年10月1日以後に解散した法人からは通常の損益計算と同様に税務処理を行うこととなりました。
が、ここで注意が必要です。
これまでは法人が解散した場合には、清算所得課税といって通常の損益計算ではなく、財産制のあるもののみ課税の対象とする清算所得課税でしたが、今後は通常の損益計算となりましたので、例えば、社長が会社に対する債権を放棄した場合には、会社は債務免除益を計上しなければならなくなりました。
もっとも、債務免除益を計上した場合であっても、今回の改正において期限切れ欠損金の利用範囲が大幅に拡大したため、実態が債務超過であればこの債務免除益と期限切れ欠損金を相殺させ過大な税金が生じないような手当はなされています。
しかし、この期限切れ欠損金は無条件で利用できるものではないため、所定の手続きを失念すると、結局、債務免除益に対して課税がなされてしまいます。
そして、上記のような手続きを失念する会社の場合、たいていは既に残余財産を分配してしまってから納税しなければならない事態が発覚し、結局、社長や清算人に対して第2次納税義務が生じることが多いようです。
この第2次納税義務というのは本当に厄介な規定ですので、同族会社の社長は常に念頭に入れておくことをお勧めいたします。