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第二会社方式での第二次納税義務
赤字が続く会社の中には、組織再編を通じて難局を打開しようと検討する会社も多いと思いますが、昨今、注目を浴びている第二会社方式では第二次納税義務に注意したいところです。
第二会社方式の概略は以下の通りです。
赤字会社が様々な事業を営んでいる場合において、その中の優良事業のみを抽出して本体から切り離し別会社化します。そして、本体に残った赤字部門を清算し、今後は別会社化した優良事業のみで事業を行っていく、これが第二会社方式です。
このとき注意したいのが、赤字部門のみとなった本体を清算する場合、金融機関や社長などから債務免除を受けた金額が欠損金を上回るケースです。
債務免除を受けた場合には債務免除益という収益を認識するのですが、これが繰越欠損金よりも少なければ課税されずに済みますが、繰越欠損金よりも多い場合にはその多い金額について法人税等が課税されます。
そして、通常は、清算してゆく会社ですから課税されたとしても納税する資金がありません。
そうすると、「資金がないから納税できない」では税務署は許してくれず、第二次納税義務といって優良部門を切り離した別会社に納税義務が移ります。
結局、税金はどこまでもついてきます。
上記の例に限らず、第二次納税義務まで含めたタックスプランニングは非常に重要です。
短期間での高額役員退職金は課税強化へ
我が国では、退職金は給与の後払い的性格を考慮し、担税力の観点から課税軽減措置が取られています。
具体的には、退職金から勤務年数に応じた「退職所得控除額」を控除し、更にそれを1/2にしてから税率を乗じて所得税を計算します。
ところが、天下りにより財団法人等の役員に就いた人や、外資系企業の役員等については、極めて短期間で役員を退職して退職金を受給するケースが散見されます。
民主党の税制改正プロジェクトチームではこれを問題視し、短期間で役員退職金を受給したケースについては1/2課税の軽減措置を適用しない方向で検討がなされています。
また、政府税制調査会の全体会合においても、同様の指摘がなされています。
「短期間」の定義については、退職所得と同様に1/2課税が採用されている短期譲渡所得を参考にし、
「5年以下」で調整が図られているようです。
更正の請求期間が5年になるかも知れません
いったん提出した申告書に間違いがあることが判明した場合、
追加で納税する必要がある場合の申告を修正申告といいます。
反対に、払い過ぎていた税金の還付を求めることを 「更正の請求」 といいます。
修正申告は何年後でも提出することができますが、
更正の請求は、もともとの申告に係る法定申告期限から1年以内と定められています。
一方、国は、納税者が提出してきた申告書に間違いがあることを発見した場合には、
「更正」処分をすることができ、この更正することができる期間は増額更正の場合には法定申告期限から3年以内(法人税は5年以内)、減額更正の場合には同5年以内となっています。
ここで気を付けたいことは、納税者が税金の還付を請求する権利は1年しかありませんが、国は5年以内であれば還付することができるという点です。
では、納税者が、法定申告期限から1年を超えて税金を払い過ぎていたことを発見した場合にはどうすればいいかといいますと、「嘆願書」というものを提出し、還付の請求をします。
但し、これは法律上の権利ではありませんので、嘆願書を提出したからといって税務署が必ずしも還付してくれるとは限りません。
現在の国税通則法では上記のような法律構成になっています。
が、これが変更になるかも知れません。
政府税制調査会に設置された納税環境整備プロジェクトチームの検討によれば、納税者が 「更正の請求」 をすることができる期間を、「法定申告期限から5年以内」 に変更することを予定しているようです。
これが実現すれば、国が増額更正することができる期間と、納税者が更正の請求をすることができる期間が同じになり、国と納税者とのバランスが保たれることになります。
実現してほしい改正の一つです。
法人設立初年度と2年度の消費税免税が課税になるかも知れません。
消費税法上、資本金1,000万円未満で法人を設立した場合には、設立初年度と2年度目の消費税が免除されています。
これを悪用して、2年度目が終了したらその法人は解散し、別の法人を設立して、また設立初年度と2年度目の消費税の免除を受け、これを繰り返すことにより消費税の免税を受け続けるという租税回避行為が見受けられますが、これを封じる税制改正が議論されています。
平成23年度税制改正では、
「課税売上高が1,000万円を超えることが期の途中で明らかになった場合には、翌期から消費税を課税とする」
方向で検討中とのことです。
何をもって 「1,000万円を超えることが明らかになった」 と判断するのか難しいところですが、どうやら半期で1,000万円を超えていると、「1,000万円を超えることが明らかになった」 とするようです。
そうすると、期の後半で返品や契約変更、契約破棄等があった場合はどうなるのか。
疑問です。
養老保険を利用した節税が封じ込められてしまうかも知れません。
節税なのか租税回避行為なのか議論のあるところですが、法人で加入した養老保険を個人に契約変更して、その個人が解約返戻金あるいは満期保険金を受領することで、法人の資金を個人に移転するという手法がありましたが、近いうちにこれが封じ込められることになりそうです。
法人から個人に契約変更した場合、一般的には解約返戻金相当額などで譲渡(或いは給与の支給を)したものと取り扱われます。
そして、その後、個人が満期保険金を受け取った際には一時所得として課税されますが、この時、これまでの取扱いでは、法人が支払ったか個人が支払ったかを問わず、払い込まれた保険料は全て控除することができました。
しかし、先般の年金保険に係る最高裁判決を踏まえた対応の中で発足した「最高裁判決研究会」が、今後は、一時所得の計算上控除することができる法人が支払った保険料は、個人が給与課税を受けたものに限る旨の提言を行いました。
今春の税制改正には間に合わないかも知れませんが、近い将来、上記の資金移転策は封じ込められることになりそうです。