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あなたの納税情報も未来永劫管理されるかもしれません。
共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)が今国会を通過し成立しそうです。
これにより,我々1人ひとりのあらゆる情報が管理されます。
税金に関していえば,現在でも各税務署は納税者1人ひとりに8ケタの番号を付して管理していますが,今後は更に詳細に管理されることになりそうです。
預貯金の利子や有価証券の配当金,給与収入から退職金まで全て1つのデータベースで管理すれば,こちらが確定申告しなくても,既に国税庁で把握している数字を印字して申告書を郵送してきて,その通りに納税する,そんなことも可能となります。
数年前,クライアントの相続税の税務調査を受けたときに,調査官から「今回亡くなったお母様は12年前に旦那さんが亡くなった際に多額の財産を相続していたようですが,その時の相続税の申告書はまだありますか?署には無かったもので・・・。」と言われたことがあります。
その時は本当に無かったので「ありません」とお答えしましたが,後日,昔の申告書が出てきまして,その申告書には相続人も知らなかった預貯金や不動産が沢山記載されていました。
マイナンバー法で管理されれば,過去の申告書も決して無くなることはありません。
税制改正により,その年の12月31日において国外に財産を有する居住者は,その合計額が5,000万円を超える場合には,その国外財産の種類,数量及び価額その他必要な事項を記載した調書を翌年3月15日までに税務署長に提出しなければならないことになりました。
また,年間所得金額2,000万円以上の人は,国内国外を問わず,全ての財産債務を確定申告のときに税務署長に報告しなければいけません(こちらの制度は以前からあります)。
現在はこれらの情報は紙で保管されているだけのようですが,今後は当然ながら全てデータベース化されると思われます。
紙の場合,保管場所の関係から特に重要な書類以外は数年で破棄しているようですが,データベース化されますと情報は破棄されることはありません。
そうしますと,働きだしてから亡くなるまで,いつ,いくら稼いだのか,財産や債務がいくらあるのか,未来永劫管理されることになり,こうした情報は相続税の税務調査において極めて強力な威力を発揮します。
世の中のほとんどの人は所得隠しや脱税,財産隠し等をしようと思っていないと思いますが,それでも,普通は他人に知らせないことを,自分の意志とは関係なく国に知られるのは,気持ちの良いものではありません。
法律ができてしまえば仕方ありませんが,不正利用されないことを祈るばかりです。
教育資金一括贈与の贈与税の非課税
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に,30歳未満の子や孫が,親や祖父母から教育資金を一括で贈与を受けた場合には,1,500万円まで非課税となる制度が新設されました。すなわちもう始まっています。
従来から,扶養義務者相互間において生活費や教育費を贈与した場合,通常必要な金額をその都度贈与する分には何ら課税上の問題はありませんでしたが,今回の制度は,その時必要な金額を超えて一括して贈与した場合であっても,その時は取り敢えず1,500万円までは課税しないというところに特徴があります。
制度の概要は以下の通りです。
まず,親又は祖父母が贈与する金額を金融機関に信託します(預けます)。
そして,子や孫は教育資金に関する領収書等を金融機関に提示して金銭の払い出しを受けます。
子や孫が30歳になった時点で残額があれば贈与税が課税されます。
教育資金の範囲は大きくは2つに分かれていて,学校等に対して直接支払うものと,学校等以外に対して直接支払うものです。
学校等に対して直接支払うものは,入学金,授業料,入園料,保育料,施設設備費,学用品の購入,修学旅行代,学校給食費等です。私立学校への寄附金は国税庁HPの例示に掲載されていませんので非課税対象外となる可能性が高いと思います。
学校等以外に対して直接支払うものは,学習塾,そろばん塾,水泳教室,野球教室,ピアノ教室,絵画教室,バレエ教室等へ直接支払うものです。この場合において,習い事で必要となる備品は,その教室を通して購入したものは非課税対象になりますが,街のお店で個人的に購入したものは対象となりません。また,学校等以外に直接支払ったものについては上限500万円という制限があります。
高齢者の預貯金を景気刺激材料に使用する為に導入されたこの制度ですが,早くも運用上の問題点が指摘されています。
まず,この制度の適用を受けるためには,金融機関で教育資金口座の開設を行った上で,「教育資金非課税申告書」を当該金融機関を通じて所轄税務署長へ提出する必要があります。
そして,金銭払い出しの為の領収書も金融機関へ提出します。
金融機関はそれらを長期に渡り保管しなければなりません。0歳の子や孫への贈与の場合,その子が30歳になるまで保管する必要があるわけですから最長36年です(贈与税の課税処分は6年後まで遡ることができるため)。
教育資金の残額があれば36年後に贈与税が課税されるわけですが,適正な課税が可能なのかいささか疑問です。
しかも,この制度の適用期間は今のところたったの2年9ヶ月です。
制度が延長される可能性はありますが,もし延長されなかった場合,たった2年9ヶ月のために36年間の資料保存義務が金融機関に課されます。
多額の相続税を支払うよりは取り敢えず贈与しておこうという選択は有りかも知れません。
一時の課税を逃れるための時間稼ぎにはなりそうです。
中小企業支援に関する補助金について
補助金の受給申請にはいくつか心得ておくことがあります。
まず,ほとんどの補助金には公募期間があります。
当然ですがこの公募期間中に申請しないと補助金は受給できません。
次に,公募期間中に計画書を申請し,審査を通過して「採択」される必要があります。
次に,交付申請をし,交付決定を受けます。
以下,現在,注目されている補助金をいくつかご紹介します。
相続対策に向かない成年後見制度
成年後見制度とは,認知症・知的障害者・精神障害等によって物事を判断する能力が十分ではない方(以下,「本人」という)について,本人の権利を守る援助者(「成年後見人」等)を選ぶことで,本人を法律的に支援する制度です。
成年後見制度を利用する場合,まずは家庭裁判所に申立てをする必要があります。
申立てをすることができる者は,本人・配偶者・四親等内の親族等です。
家庭裁判所はこの申立てがあった場合,最も適任と思われる者を成年後見人に選任しますが,必ずしも申立て時に挙げられた候補者から選任するとは限らず,候補者以外の弁護士,司法書士,税理士等の専門家を選任することもあります。
よって,一般的には本人の親族を成年後見人の候補者として申立てすると思いますが,全く関係のない第三者が成年後見人として選任されることも有り得ます。
選任された成年後見人は,本人の意思を尊重し,本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら,本人に代わって財産を管理したり必要な契約を結んだりします。
本人の利益のために,本人の財産を適切に維持し管理する義務を負うのですが,この財産維持管理義務が相続対策の上ではネックになります。
例えば,資産家の子がその資産家の成年後見人となった場合,多額に相続税が課税されそうなので生前に贈与を受けようと思っても,それは子の為であって本人の為ではないので認められません。
土地を担保に銀行からお金を借りて賃貸不動産を建築しようと思っても,借金をする行為が本人の為ではないとして認められません。
過去には成年後見人が本人の財産を費消しているとして,家庭裁判所が業務上横領で告発した事例もあります。
また,家庭裁判所の「成年後見制度」というパンフレットには,「成年後見人が本人の財産を投機的に運用することや,自らのために使用すること,親族などに贈与・貸付けをすることなどは,原則として認められません。」と記載してあります。
このように,成年後見制度での財産管理とは,現状のままで固定することです。
不動産を多数所有している資産家ならば,不動産売買による資産の組換え,借入による相続財産の圧縮,生前贈与等の対策は必須ですから,成年後見の申立てをしてしまうと,積極的な相続対策は事実上できなくなってしまいます。
成年後見制度を利用する場合は,それによるメリット・デメリットを充分に検討する必要があります。
給与所得者の特定支出控除について
サラリーマン等の給与所得者は,確定申告をしなくても会社の年末調整で課税関係が終了しているケースが一般的ですが,確定申告をすることで税金が還付される場合があります。
医療費控除や住宅ローン控除等は広く知られていますが,あまり知られていない制度として「給与所得者の特定支出控除」というものがあります。
この制度は平成25年分から大幅に改正されましたので,今後は多くのサラリーマンに適用されるかも知れません。
給料については,その給与額面から給与所得控除というものを控除します。
この給与所得控除は,サラリーマンに認められた概算経費みたいなもので,この控除は日本中の全ての給与所得者が適用しています。
そして,実はこれ以外に,「特定支出控除」というものを控除することができるのです。
「特定支出」をした給与所得者は,1年間における特定支出が一定の金額を超えた場合に控除が認められます。
控除の対象となる「特定支出」の範囲は次の通りです(⑥と⑦は改正により付け加わりました)。
①一般の通勤者が通常必要である通勤費
②転勤に伴う引越のために通常必要である引越費用
③職務に直接必要な技術や知識を得るための研修費用
④職務に直接必要な資格取得費用
⑤単身赴任の人が勤務地と自宅を往復する旅費
⑥職務に直接必要な弁護士,税理士等の資格取得費用
⑦次に掲げる支出(年間65万円まで)で勤務先が必要な支出と認めたもの
職務に関する書籍や定期刊行物,勤務場所で着用する衣服,交際費や接待費
(※資格取得費用の中でも⑥はこれまで認められていませんでした。)
控除される金額の限度額は以下の通りです。
給与収入1,500万円以下の場合
→その年中の給与所得控除額×1/2
給与収入1,500万円超の場合
→125万円
これまでこの制度はほとんど適用されていませんでしたが,今回の改正により,職務に関する書籍代やスーツ代,交際費などが認められることになりましたので,今後は大幅に適用者が増えると見込まれています。
但し,上記⑥と⑦は勤務先が必要と認めた支出に限定され,勤務先の証明書が必要ですので,常識を逸脱した金額の場合は否認される可能性はあります。
高級スーツや高級料亭などが認められるか否か,そのうち事例として出てくると思いますので,その際はまたお知らせ致します。