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ゴルフ会員権での節税は平成26年3月までに

2014-01-14(火) 08:54:27

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平成26年度の税制改正大綱が発表されました。いつ改正されてもおかしくないと言われていたゴルフ会員権の損益通算がついに適用不可となります。

不可となるのは平成26年4月以降の譲渡からです。

よって,含み損を抱えたゴルフ会員権で使用していないものがある場合には,来年3月までに譲渡しましょう。

 

制度の仕組みを確認します。

個人がゴルフ会員権を譲渡し譲渡益が発生しますと,譲渡所得として所得税及び住民税が課税されます。

一方,譲渡して譲渡損が発生した場合は,損益通算と言いまして,給与所得など他の所得と相殺できます。相殺すれば当然ですが税金が安くなります。

 

ところで,所得税法では,別荘や競走馬,1個30万円を超える貴金属や骨董品などを「生活に通常必要でない資産」と定義しており,これらを譲渡して譲渡損が発生したとしても,他の所得と相殺する「損益通算」の適用は無いと規定しています。

これらはいわゆる贅沢品ですから,贅沢品を譲渡して損をしたとしても税金を安くしてあげる必要は無いという趣旨です。

 

ところが,これまで所得税法上,ゴルフ会員権はこの「生活に通常必要でない資産」に含まれていませんでした。

よって,ゴルフ会員権を譲渡して譲渡損が発生した場合,給与所得など他の所得と損益通算することができました。

 

常識的に考えて,ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」であることは明らかですので,もう何年も前からこの部分は改正されると言われ続けていましたが,今回,ついにこの部分が改正されることになりました。

 

また,相続や贈与によりゴルフ会員権を取得した場合であっても,購入当初の取得価額を引き継ぎますので,被相続人や贈与者が購入したときよりも今の相場が下落している場合は,売却して譲渡損を発生させ,他の所得と損益通算することができます。

 

<計算例>

昭和60年に父親がAゴルフ会員権を500万円で購入したが,最近の相場での時価は約20万円の場合。

これを息子に贈与します。贈与税は年間110万円までは非課税ですので,Aゴルフ会員権を贈与しても息子に贈与税は課税されません。

息子は贈与により取得したAゴルフ会員権を知人や親戚,買取業者に20万円で売却します。

この場合の譲渡損益の計算は,譲渡価額20万円-取得費500万円=-480万円となり,480万円の譲渡損となります。

これを息子の給与所得と相殺することで所得税と住民税を安くすることができます。適用期限は平成26年3月末まで。

 

父親から息子に贈与した時点で名義書換料をゴルフ場に支払う必要がありますが,家族への贈与の場合は安い名義書換料で済む場合も多いですから,一度試算してみると良いかも知れません。

 

 

相続税の税務調査

2013-11-08(金) 18:02:49

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平成27年から改正相続税法が適用され相続税の基礎控除が大幅に減額されます。そのため首都圏では相続税の課税対象となる方が倍になると言われております。そこで今回は,相続税の申告後に税務調査に入り易いと思われるケースをご紹介します。

 

毎年の所得税の申告に比し,相続税の申告財産が少額である場合

所得税では年間所得2,000万円以上の人は所有する全ての財産を記載した「財産債務の明細書」を提出しなければいけないことになっていますので,適正に毎年申告していれば税務署はある程度の相続財産の予測がつきます。

 

亡くなる数年前に不動産や有価証券を売却していて,その売却代金が相続税の申告財産に含まれていない場合,あるいはその確認を要する場合

税務署には昭和40年くらいからの資料が残っているそうですので,過去の資料と辻褄が合わない申告は調査に来ます。

 

銀行等への照会から相続直前に多額の預金引出しがあるにもかかわらず,それが申告財産に含まれていない場合

税務署は被相続人及び相続人の銀行口座全てを過去3年分から5年分は確認しています。銀行は旧大蔵省管轄・郵便局は旧郵政省管轄でしたので,昔は郵貯は申告しなくて大丈夫,などという噂もありましたが,現在は全くそんなことはありません。

 

金融資産が多く,口座間の動きが多い場合

名義預金があるのではないかと疑われます。

 

多額の借入金がありながら,それに見合う申告財産がない場合

不動産購入などの借入理由がわかれば問題ありませんが,借入目的がはっきりしないと問題とされます。

 

遺産額が高額な場合

東京国税局管内では,3億円を目安に調査に入るか否かを決めているようです。

 

会社を経営しているオーナー社長等で会社に対し多額の借入金や貸付金がある場合

相続人が株主となっていて,その株が名義株なのではないかと疑われる場合もあります。

 

金取引を行っている場合

金や昔の割引債は無記名で取引することも可能なため,隠し財産が無いか確認に来ます。

 

海外投資を行っている場合

海外に隠し財産が無いか確認に来ます。特に,配偶者や相続人が海外居住や外国籍の場合は要注意です。

 

広大地の評価を行っている場合,鑑定評価で申告している場合,売却価格で申告している場合

相続税の財産評価は国が定めている「財産評価基本通達」に則って評価するのが通例ですが,それ以外の評価方法も違法ではありません。違法ではありませんが,通例から外れますので調査に入られやすいです。

 

 

相続財産については亡くなった方しか知らないことも多く,相続税は申告漏れが多い税目です。意図的な申告漏れは論外ですができる限り適正な申告を心掛けたいものです。

 

 

非嫡出子の相続分1/2規定は憲法違反

2013-09-25(水) 18:10:43

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結婚していない男女間に生まれた子供(非嫡出子・婚外子)の遺産相続分を,嫡出子の半分と定めた民法の規定が,法の下の平等を保障した憲法に違反するか否かが争われた家事審判の特別抗告審で,最高裁大法廷は,当該規定を「違憲」とする初判断を示しました。

 

1995年にも同様の事案がありましたが,このとき最高裁は合憲と判断していますので,判断を変えたことになります。

 

1995年に合憲とした最高裁決定の概要は次の通りです。「日本では結婚し夫婦間で子をつくる考え方を尊重する一方で,婚外子は夫婦間の子の半分の相続分を認め保護する。民法の当該規定は,法律婚の尊重(国の考え方)と婚外子の保護(個の尊重)の調整を図ったものだから,相続分に差があっても合憲である。

 

今回,違憲とした最高裁決定では,「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきた(中略)。法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,(このような)認識の変化に伴い,(法律婚の)制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている(中略)遅くとも2001年7月当時において(相続分に差のある民法の規定は)憲法に違反していた」と判事しました。

 

1995年当時は,法律婚尊重と婚外子保護の調整がより大切でありましたが,社会が変化し,遅くても2001年7月時点では,それよりも個人の尊重・個人の平等のほうが大切になった,ということでしょうか。

 

今回の最高裁決定に対する評価は今後色々なところで議論されることになり,早晩,民法の当該規定は改正されることになると思いますが,今後の相続実務においては,民法が改正されるまでの間であっても,当該決定を無視するわけにはいかなくなります。

すなわち,民法が改正されるのを待つまでもなく,2001年7月以降に発生した相続で現段階でまだ遺産分割が未確定のもの,あるいは今後発生する相続については,今回の最高裁決定を踏まえ,嫡出子であっても非嫡出子であっても相続分は平等である,ということになります。

 

尚,今回の違憲判断が他の同種の事案に与える影響について,「先例として解決済みの事案にも効果が及ぶとすれば,著しく法的安定性を害することになる」として,過去に決着している事案には影響を及ぼさないとしています。

 

よって,既に遺産分割が確定している事案について今回の最高裁決定を理由とする遺産分割のやり直しはできません。

 

 

<追記>

本件に関しては国税庁が,「相続税法における民法第900条第4号ただし書前段の取扱いについて(平成25年9月4日付最高裁判所の決定を受けた対応)」を公表していますので,そちらも参考にして下さい。

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/index.htm

 

 

 

賃貸不動産を取得して相続税を下げる方法

2013-08-08(木) 08:57:36

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1億円で建物を建築したとします。

建築に1億円かかっても相続税を計算するときの建物評価は固定資産税評価額を使用することになっています。

これが大抵と言いますか絶対に建築費よりも安くなります。固定資産税評価額は時価の7割を目安に市区町村が決めるからです。

貸家の場合,他人に貸しているので自分の自由には使用できません。よってこの分,評価額を下げます。どれだけ下げるかと言いますと3割(借家権割合)です。

 

1億円で建築した建物の固定資産税評価額が仮に7,000万円としますと,ここから30%の借家権割合を控除しますので4,900万円(=7,000万円×(1-0.3))となります。現金1億円を持っているより,貸家として持っているほうが相続税の課税対象が半分になります。

 

土地も同様です。更地だと1億円の評価の土地があるとします。この土地の上に貸家を建築しますと,やはり土地の利用に制限が加わりますので,その分評価を下げます。どれだけ下げるかと言いますと,借家権割合と借地権割合を乗じた分だけ下がります。

 

借地権割合70%の地域に更地評価1億円の土地を持っている場合に,この土地の上に貸家を建築しますと,借家権割合30%×借地権割合70%=21%の評価減ですから土地の評価額は7,900万円となります。

 

上記の例ですと建物と土地を合わせて7,200万円の評価減です。相続税率30%の場合は2,160万円の,税率50%の場合は3,600万円の節税です。

 

相続税は見えざる借金です。

 

今は顕在化していなくても,相続が発生した途端に姿を現します。相続税額と同じだけの現金を相続できればまだいいですが,不動産を売却しないと納税できないような場合は,相続税のために生活が一変してしまうこともあり得ます。そうならない為にも,事前にきちんと対策を練っておくことが非常に重要です。

 

貸家を購入する現金が無い場合は金融機関から借入することになりますが(こっちが普通です),家賃収入から借入を返済して管理費や固定資産税等の経費も支払って,それでも現金が残るようになっています。そうでなければ金融機関はお金を貸してくれません。

現金が手元に残って,見えざる借金である相続税も軽減されるのですから,やらない手は有りません。入居者が見つからなくて家賃が入って来ないかも,と心配される方がいらっしゃいますが,入居実績が無い新築物件を購入する必要は全くないので,何年も満室稼働で安心の中古物件を選べばいいだけです。

 

賃貸不動産による相続税対策は今も昔も有効です。

 

 

こんな贈与はレッドカードです。

2013-06-23(日) 21:33:40

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父Aは,昭和60年3月14日,自己が所有する不動産を子Xに贈与するため,公正証書を作成しました。

 

当該公正証書には,

①父Aが所有する不動産を子Xに贈与し,子Xはこれを受諾した。

②父Aは本件不動産を本日引渡し,子Xはこれを受領した。

③父Aは子Xから請求があり次第,本物件の所有権移転登記をしなければならない。

④登記申請に要する費用は子Xの負担とする。

と記載されていました。

 

平成5年12月13日,子Xは父Aから本件不動産について,「昭和60年3月14日贈与」とする所有権移転登記を受けました。

そこで,Y税務署長はXに対し,平成7年になって贈与税の課税処分を行いました。

Xは課税処分に不服があるとして提訴しました。

 

本件の問題の所在は,不動産を贈与した時期がいつか,ということです。

国が課税処分をする場合,7年までしか遡れません。贈与の時期が昭和60年なら課税処分は違法となり取り消されますが,登記をした平成5年なら課税処分は適法ということで贈与税が課税されます。

さて,答えは?

 

言うまでもなく,贈与税とは,贈与により「財産を取得した時」に課税されますが,この贈与の時期については課税実務上トラブルとなるケースが後を絶ちません。

そこで,相続税基本通達では,贈与による財産取得の時期の原則について,「書面によるものについてはその契約の効力の発生した時,書面によらないものについてはその履行の時」と定めています(相基通1・1の2共-7(2))。

 

また,このような取扱いのみでは,親族間贈与のようにその時期が必ずしも明確にならない場合もあるということで,同通達は更に,「所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1・1の共7の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において,その贈与の時期が明確でないときは,特に反証のない限りその登記又は登録があったときに贈与があったものとして取り扱うものとする。」と定めています(相基通1・1の2共-10)。

この取扱いは判例上も概ね支持されています。

 

よって,本件については当然に課税処分は適法ということになり,贈与税が課税されました。(名古屋高裁平成10年12月25日判決,訟月46巻6号3041頁,税資239号1153頁)

 

課税の問題を考えるとき,「常識」を基準に考えると概ね間違いありません。税法は基本的には公平にできています。「常識」で考えて,おかしいな,変だな,と思えば大概その判断は合っています。もっとも,人によっては常識の範囲が異なるので,そこが実務上の難しいところでもあるのですが・・・。