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居住用賃貸建物の取得に係る消費税の改正について
消費税は,その事業年度における「売上げに係る消費税」から「仕入れに係る消費税」を控除し,その残額がプラスなら納税し,マイナスなら還付を受ける仕組みになっています。ただし,控除することができる「仕入れに係る消費税」には様々な制限があります。
不動産を購入する場合,土地は消費税非課税ですが建物は消費税課税なので,賃貸不動産を購入しますと建物に係る多額の消費税を支払うことになり,これまで,この建物に係る多額の消費税を還付してもらうべく様々なスキームが考案されてきました。
古くは自動販売機方式が流行り,最近では金地金方式が主流になっていましたが,新しいスキームが考案されては法改正で封じ込められるということが繰り返されてきました。
今回の改正では,居住用賃貸建物の取得に係る消費税は仕入税額控除そのものが認められないこととなり,根本的に規制されることになりました。
1.居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限
事業者が,国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については,仕入税額控除の対象としないこととされました。
居住用賃貸建物とは,住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものをいいます。
この場合おいて,住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは,建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい,例えば,その建物の全てが店舗であるなど建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。
また,店舗併用住宅等の場合で住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分(居住用賃貸部分)とに合理的に区分しているときは,その居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については,これまでと同様,仕入税額控除の対象となります。
2.居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整
上記1の制限を受けた居住用賃貸建物について,次のいずれかに該当する場合には,仕入控除税額を調整することとされました。
①第三年度の課税期間の末日にその居住用賃貸建物を有しており,かつ,その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に課税賃貸用に供した場合・・・一定額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算
②その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合・・・一定額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算
第三年度の課税期間とは,概ね居住用賃貸建物を取得した課税期間の翌々課税期間をいい,調整期間とは居住用賃貸建物を取得した日から第三年度の課税期間の末日までの期間をいいます。
また,課税賃貸用とは,非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用をいいます。
3.控除対象外消費税
居住用賃貸建物に係る課税仕入等の税額については,仕入税額控除が制限されることとなるため,控除対象外消費税として処理されることとなります。
4.住宅の貸付けに係る非課税範囲の見直し
住宅の貸付けについては,契約において人の居住の用に供することが明らかな場合に消費税が非課税とされていますが,その契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない場合であっても,その貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合については消費税を非課税とすることとされました。
5.改正時期
上記1〜3の改正は,令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の取得から適用され,上記4は令和2年4月1日以後に行われる住宅の貸付けから適用されます。
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新型コロナウイルス感染症対策情報その5
<雇用調整助成金> ※続報
従業員が概ね20人以下の小規模事業主については申請書類が大幅に簡素化されています。
助成金の上限額も当初8,330円(1人1日)から15,000円に引き上げられていますので,申請書類の多さと複雑さから申請を躊躇っていた方も諦めずに申請して下さい。
申請に必要となる書類は次のとおりです。
・様式が指定された支給申請書類3枚
・任意の1か月の売上が前年同月比で5%以上減少していることを証する書類(売上帳,試算表等)
・休業させた日時がわかる書類(出勤簿等)
・休業手当や賃金がわかる書類(給与明細の写し等)
・役員名簿(役員等がいる場合)
尚,東京23区のうち次の区については申請書作成無料相談窓口を設けたり,社会保険労務士等への代行費用の助成を行ったりしています(弊事務所調べ)。
[相談窓口設置] 港区,新宿区,台東区,目黒区,大田区(経営相談),世田谷区(経営相談),渋谷区(経営相談),中野区(経営相談),杉並区,板橋区,葛飾区,江戸川区(経営相談)
[専門家費用助成] 目黒区,豊島区,北区
<テレワーク設備支援補助金(東京都港区)>
東京都港区は新型コロナの感染拡大防止等の対策として行うテレワーク環境の整備に必要な費用の一部を補助します(詳細は港区HP参照)。
この補助金は,テレワーク環境の整備に係る設備費用としてPCやWebカメラ等も補助対象となっています。
また,勤怠管理システム等の業務効率化に係るソフトウェア,クラウドサービスの利用料や,事業者が負担したテレワーク環境のための通信料,コワーキングスペース利用料,在宅勤務中のベビーシッター費用まで補助対象となっているところが特徴です。
<店舗等家賃減額助成金(東京都新宿区)>
東京都新宿区は新型コロナの影響で売上が減少している区内事業者を支援するため,賃貸人が店舗等家賃を減額した場合に,賃貸人に対して減額した家賃の一部を助成します(詳細は新宿区HP参照)。
助成額は減額した金額の1/2(1か月・1物件当たり上限5万円)で最大で6か月分です。1人の賃貸人につき1か月当たり5物件まで。
<緊急家賃助成事業(東京都文京区)>
東京都文京区は新型コロナの影響を受けている区内中小企業を支援するとともに感染拡大の防止を図るため,休業又は営業時間短縮を行った区内中小企業者に対し,店舗の賃料の一部を助成します(詳細は文京区HP参照)。
助成額は賃料月額(1か月)の4/5以内で,上限は代表が区民の場合は20万円,区民以外の場合は10万円です。
<業態転換・新ビジネス創出補助金(東京都世田谷区)>
東京都世田谷区は業態転換や経営の多角化等新たなサービスを創出する取組に対する補助制度を開始します(詳細は世田谷区HP参照)。
補助上限額は1事業者10万円で,例えば次のような取組に対し補助されます。
・小売業の独自のインターネット販売やオンライン受注システムの構築
・業態転換に対応するための商品や製品開発
・キッチンカー事業の展開等
<新しい芸術鑑賞様式助成金(東京都杉並区)>
東京都杉並区は,区民等が安心して芸術を鑑賞できるよう3密対策を講じて区内で実施する文化・芸術活動事業(新しい芸術鑑賞様式)に対し,その事業に係る経費の一部を助成します(詳細は杉並区HP参照)。
助成金額は1事業当たり上限30万円です。
今回ご紹介した助成金等はほんの一部です。他市区町村にも色々な助成金が設けられています。
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新型コロナウイルス感染症対策情報その4
<持続化補助金> ※持続化給付金ではありません。
元々あった補助金ですが,小規模事業者等が新型コロナの影響を乗り越えるために行う販路開拓等の取り組みに係る経費の一部も補助対象になりました。
[対象者] 小規模事業者等
[補助上限] 100万円(特例事業者は150万円)
[補助率] 類型Aは2/3,類型B及び類型Cは3/4
類型A:サプライチェーンの毀損への対応(顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと)
類型B:非対面型ビジネスモデルへの転換(非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと)
類型C:テレワーク環境の整備(従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること。但し,PC・タブレット・WEBカメラ等のハードウェアの購入費用は対象外)
[受付締切] 2020年08月07日(第3回受付)郵送必着,2020年10月02日(第4回受付)郵送必着
[補助対象となり得る販路開拓等の取組事例]
・新商品を陳列するための棚の購入
・新たな販促用チラシの作成,送付
・新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告,ウェブサイトでの広告)
・新たな販促品の調達,配布
・ネット販売システムの構築
・国内外の展示会,見本市への出展,商談会への参加
・新商品の開発
・新商品の開発にあたって必要な図書の購入
・新たな販促用チラシのポスティング
・国内外での商品PRイベント会場借上
・ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導,助言
・新商品開発に伴う成分分析の依頼
・店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良,飲食店の店舗改修等)不動産の購入取得は不可
<ものつくり補助金(一般型)>
こちらも元々あった補助金ですが,新型コロナの影響を乗り越えるため前向きの設備投資を行う事業者を支援するため制度が拡充されました。
[対象者] 中小企業・小規模事業者等
[補助上限] 原則1,000万円
[補助率] 通常枠:中小1/2,小規模2/3 特別枠:類型A2/3,類型B及び類型C3/4
※類型の定義は持続化補助金と同様です。
[受付締切] 2020年08月03日17時(第3次締切) ※第4次(R02年11月)及び第5次(R03年2月)も予定されています。
[主な対象経費]
・専ら補助事業のために使用される機械・装置,工具・器具(測定工具・検査工具,電子計算機,デジタル複合機等)の購入,製作,借用に要する経費
・専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築,借用に要する経費
・本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
・本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費(単価上限有り)
・クラウドサービスの利用に関する経費(他事業と共有する場合は補助対象となりません。)
・試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
・新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負,委託等)する場合の経費
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新型コロナウイルス感染症対策情報その3
<無担保・延滞税無しの納税猶予>
令和2年2月1日から令和3年1月31日に納期限が到来する国税について,新型コロナの影響により令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において事業収入が前年同期と比較して概ね20%以上減少しており,国税を一時に納付することができない場合には,所轄の税務署に申請することにより,納期限から1年間,納税の猶予(特例猶予)が認められます。
特例猶予が認められると,猶予期間中の延滞税は全額免除されます。また,申請に当たり担保は不要です。
地方税についても概ね同様です。
<法人税の繰戻還付>
青色欠損金の繰戻し還付制度とは,青色申告法人で欠損金額が生じた事業年度がある場合において,その事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に欠損金額を繰り戻して法人税の還付を受けられる制度です。
この制度は,これまで中小企業者等(資本金の額が1億円以下の法人など)については利用可能でしたが,資本金の額が1億円超10億円以下の法人も利用可能となりました。
令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について適用されます。
なお,新型コロナ税特法により本制度の対象となる法人が,令和2年7月1日前に確定申告書を提出している場合の請求期限は,令和2年7月31日となります。
<住宅ローン控除特例の要件の弾力化>
新型コロナの影響により控除対象となる住宅の取得後その住宅への入居が期限(令和2年12月31日)までにできなかった場合であっても,次の要件を満たす場合にはその適用を受けることができます。
・一定の期日(新築は令和2年9月末,中古は令和2年11月末)までに住宅取得に係る契約を締結していること。
・令和3年12月31日までに入居していること。
中古住宅を取得し,かつ,増改築等工事を行った場合の住宅ローン控除については,新型コロナの影響により期限(取得日から6か月以内)までに入居できなかった場合であっても,次の要件を満たす場合にはその適用を受けることができます。
・一定の期日(住宅取得して5か月を経過する日又は新型コロナ税特法施行日(令和2年4月30日)から2か月を経過する日のいずれか遅い日)までに増改築等の契約を締結していること
・増改築等の終了後6か月以内に入居していること
・令和3年12月31日までに入居していること。
<消費税の課税選択の変更に係る特例>
新型コロナの影響により令和2年2月1日から令和3年1月31日までの任意の1か月以上の期間の事業収入が著しく減少(前年同期比で概ね50%以上)している事業者については,所轄税務署長の承認により,特定課税期間以後の課税期間について,課税期間の開始後であっても,課税事業者を選択する(又はやめる)ことができます。
特定課税期間とは,新型コロナの影響により事業収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間をいいます。
また,本特例により課税事業者を選択する(又はやめる)場合,2年間の継続適用要件は適用されません(本特例により課税事業者を選択した課税期間の翌課税期間において課税事業者の選択をやめることも可能です。)
上記と同様に,新型コロナの影響により,簡易課税制度の適用を受ける(又はやめる)必要が生じた場合には,所轄税務署長の承認により,その被害を受けた課税期間からその適用を受ける(又はやめる)ことができます。
<固定資産税等の軽減措置>
中小企業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税について,令和2年2月から同年10月までの任意の3か月間の売上高が,前年の同期間に比し,30%以上50%未満減少している者についてはその1/2が,50%以上減少している者についてはその全額が,令和3年度分に限り減免されます。
この軽減措置は,令和3年1月31日までに,認定経営革新等支援機関等の認定を受けて各市町村に申告した者に適用されます。
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新型コロナウイルス感染症対策情報その2
<持続化給付金(国)>
- 新型コロナの影響により売上が前年同月比で50%以上減少している事業者に対し,法人は200万円,個人事業者は100万円を上限として給付金が支給されます。
業種の制限はなく給付金の計算方法は次の通りです。
「前年総売上-前年同月比50%減の月の売上×12か月」
(例)前年売上400万円,前年4月売上50万円,今年4月売上20万円の場合は給付金160万円となります。
400万円-20万円×12か月=160万円<200万円
売上50%減の月は2020年1月~12月のうち各自が任意に選択することができます。法人は資本金10億円以上を除き,NPO法人や社会福祉法人等を含みます。
申請書類は法人の場合,①法人番号,②2019年の確定申告書類控え,③減収月の売上がわかる帳簿等で,個人の場合は,①本人確認書類,②③は法人と同様です。
申請はWEB上からの本人申請が原則です。
<感染拡大防止協力金(東京都)>
- 新型コロナ感染拡大防止のため東京都の要請に応じて施設の使用停止に全面的に協力した中小事業者に対し,50万円(2店舗以上有する事業者は100万円)の協力金が支給されます。
支給対象は東京都が休止要請した施設を運営する事業者です(東京都総務局HP参照)。飲食店の場合は夜営業していた店が朝5時~夜8時までの営業に切り替えると支給対象となります。
休止要請をされていない業種の店舗が自主的に休業しても協力金は支給されません。
<国の税金について>
- 個人の所得税等の確定申告期限は4/16まで延期されましたが,4/17以降も受け付けており,実質的に当分の間は期限無しとなりました。
- 法人については一律に期限を延長するという措置は講じられておりませんが,個別に申請すれば延長が可能です。この場合,申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と付記するだけで足ります。
- 相続税についても同様に個別に申請すれば延長が可能で,申告書の余白にその旨付記するだけで足ります。
- 新型コロナの影響で売上が前年同月比20%以上減少している事業者(個人法人とも)については,1年間,国税の納税を猶予することができます。担保は不要で延滞税も課税されません。
- 中小企業等がテレワーク等のための設備の取得等をした場合には,中小企業経営強化税制の適用を受けることができるようになります。具体的には,設備の即時償却又は設備投資額の7%(又は10%)の税額控除をすることができます。
- 新型コロナの影響で今年2/1~来年1/31までのうち売上が前年同月比50%以上減少した月がある場合には,課税期間開始後であっても消費税の課税事業者を選択する(又はやめる)ことができます。この場合,2年縛りもありません。
- 今年2/1~来年1/31までに開催予定であった文化芸術スポーツイベント等のチケットを払い戻さなかった場合には,寄付金として税額控除等を受けられる予定です。但し,チケット代は年間20万円が上限で,不特定多数を対象としていないイベントやそもそも払い戻しを受けられないイベントは除きます。
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