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改めて贈与の基礎知識
民法上,贈与とは,贈与者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,これを受贈者が受諾することによって効力が生ずる契約です。
「あげますよ。」「はい,もらいます。」という関係が必要で,一方的に「あげます。」だけでは贈与契約は成立していないと考えます。
贈与の時期について,民法は,「贈与契約が成立した時点」としていますが,これを税法にそのまま当てはめると様々な課税上の問題が生じます。
そこで税法では,「贈与契約が成立した時点」=「贈与税の納税義務が成立」とはしていません。明文の規定を置かずに,贈与税の納税義務は,「贈与財産を自由に使用・収益・処分する権利が受贈者に移転した時点」に成立するとしています。
課税当局の通達では,書面による贈与についてはその契約の効力の発生した時,書面によらない贈与についてはその履行の時,としています(相基通1の3・1の4共-8)。
例えば,親から子に不動産を贈与するという公正証書を作成し6年経過後に登記したとします。民法上の贈与契約成立は公正証書作成時だとしても,税法上はあくまでも登記した時です。よって,贈与契約成立から6年経過しているから贈与税は時効で課税できない,とはなりません。そのように判示した裁判例もあります(名古屋高裁H10.12.25判決等)。
また,贈与に関して頻繁に問題になるのは名義預金です。亡くなった方が相続人に黙って或いは了解を得て相続人名義で銀行口座を開設し,預金をしていたとします。この預金の名義は確かに相続人名義ではありますが,通帳の管理も印鑑の管理も亡くなった被相続人がしていたならば,それは被相続人の預金として相続税の課税の対象となります。生前に贈与によりもらっていた,という主張は通りません。その預金を使用・収益・処分することができたのは被相続人であったからです。
贈与の事実を立証するには,贈与契約書の作成は有効です。氏名と日付は印字ではなく自筆とし,出来れば公正証書が望ましいです。公正証書はちょっと手間,と思われる方は,作成した贈与契約書に任意の切手を貼って郵便局に持参しますと切手に消印を押してくれますので,これを保管しておくと贈与契約書作成日時の証明にはなります。
まだ贈与という言葉を理解できない未成年者であっても,贈与により財産を取得することは可能です。
この場合は,親権者である父母が子の代理として贈与契約書に署名押印をします。親子間の贈与であっても親権者である父母の代理行為が子に何の不利益も及ぼさないため,家庭裁判所による特別代理人の選任は不要です。
贈与後は親権者である父母が通帳と印鑑を管理し,遅くとも受贈者が成人に達したときにはこれらを本人に渡し,自由に使用・収益・処分することができる状態にしておく必要があります。
贈与を行う際には後の課税当局とのトラブルをできるだけ避けるため,整合性のある客観的な証拠を多く残すことが重要で,特に親族間の場合には証拠の一貫性と矛盾の排除に努めたいところです。