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税務通達を適用しない非上場株式の評価の適否
掲載:2013-04-01
- 税目
- 相続税
- 裁判年月日
- 東京高裁平成25年2月28日判決
相続税を計算する場合において,それぞれの財産評価の方法を国が定め,それを公表したのが財産評価基本通達です。
財産評価基本通達は法令ではありませんので,納税者は必ずしもそれに従う義務はありません。
義務はありませんが課税当局は財産評価基本通達を根拠に課税してきますので,間接的に納税者を拘束しています。
財産評価基本通達では,証券取引所等に上場していない非上場株式を評価する方法として,まず当該会社の事業規模に応じて大会社,中会社,小会社に区分しています。
そして,大会社は原則として「類似業種比準方式」という方法で評価しますが,大会社のうち純資産価額に占める株式保有割合が25%以上の会社は「純資産価額方式」又は「S1+S2方式」のいずれかで評価します。
この「大会社のうち純資産価額に占める株式保有割合が25%以上の会社」を「株式保有特定会社」といい,資産構成が著しく株式に偏っている会社は「類似業種比準方式」では適正な株価評価を行えないとして,特別な方法により評価することとしているのです。
平成16年,ある会社の大株主Aの死亡に伴い,Aの相続人等がその会社の株式(非上場株式)を相続しました。
その会社は,資本金4億3,200万円,総資産額(帳簿価額)2,120億円,従業員5,300人,直前期末1年間の取引金額1,882億円で,ペットボトルの製造販売ではトップシェアを有する株式会社であり,その事業規模は上場会社に匹敵するものでした。
そこで,相続人等は,その非上場株式を大会社と判断し,類似業種比準方式で評価し,相続税の申告をしました。
これに対し課税当局は,当該会社は保有資産に占める株式の割合が25%以上であり,株式保有特定会社に該当するとして類似業種比準方式での評価が認められないとして課税処分を下しました。
納税者は納得できず提訴します。
裁判所は,
株式保有割合25%という数値は,通達制定当時の平成2年では「25%=資産構成が著しく株式に偏っている」といえたが,平成9年の独占禁止法改正以後は持株会社が一部容認される等,必ずしも資産構成が株式に偏っているとはいえない。
法人企業統計によれば,本件相続開始時における資本金10億円以上の会社の株式保有割合は16.31%であり,25%が格段に高いとはいえない。
よって,株式保有割合が25%以上である大会社を一律に「株式保有特定会社」とすることには合理性がない。
と判断し,課税処分を取り消しました。
相続税の原則は時価課税です。
財産評価基本通達による評価が時価でないことを立証できれば,他の方法による申告も可能なのです。
20130228