HOME >BLOG
税務調査手続きについて
平成23年度12月の税制改正において,これまで課税庁が運用上適用してきた税務調査に関する手続きが国税通則法に明文化されました。
これにより,これまで地域や国税局単位で異なる取扱いがされていた税務調査が,規定上は統一的な基準で実施されることになります。
今回統一された手続きの代表的なものの一つに「事前通知」があります。
これまでも,ほとんどの税務調査は何らかの形で納税義務者或いは代理人である税理士に対し税務調査をする旨の事前通知がなされてきましたが,今後は,税務調査に際して,①誰が,②いつ,③どのような場合に,④誰に対して,⑤何を,税務調査するかを事前に通知することとされました(通則法74条の9)。
そして,この事前通知は,納税義務者と代理人である税理士の双方に行うことと規定されています。
よって,これまでは主に税理士を通じて税務調査する旨の連絡が納税義務者にありましたが,今後は直接,納税義務者にも通知されることとなりますので,仮に,税務署からこのような通知が有ったとしても,すぐに顧問税理士に連絡するなどの冷静な対応が望まれます。
一方,通則法74条の10は,「納税義務者の申告,過去の調査結果の内容,その営む事業内容に関する情報に鑑み,違法又は不当な行為を容易にし,正確な課税標準又は税額等の把握を困難にするおそれその他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合」には,事前通知を要しないと規定していますので,今後も無予告調査が行われる可能性は残されています。
ところで,先日,クライアントの税務調査があり,顧問税理士として立会をしたのですが,その時の調査官との世間話の中で,大変興味深い見解を耳にしました。
その調査官曰く,「国税通則法が改正され,税務署内でも今後の税務調査に関する対応について色々と検討中である。その中で,法律上は事前通知が原則とされたが,実務上はそれにとらわれずに対応する予定である。通則法が改正されたからといっても,今後も事前通知なしの無予告調査は違法ではないのだから。」とのこと。
この発言にはビックリしました。改正された法律の原則を例外扱いし,執行上は例外を原則扱いとする,すなわち「事前通知などしない」と宣言しているようなものです。一調査官の発言ですが,税務署内の改正通則法への意識や雰囲気を表している気がします。
いずれにしましても,態度の悪い調査官や営業妨害的な税務調査には厳正に対応したいと思います。