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国外転出時課税制度
国外転出時課税制度は平成27年度税制改正において創設された制度で,時価1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外へ提出する場合には,その国外へ転出する時に,その有価証券等の譲渡があったものとみなして,その有価証券等の含み益に対して所得税を課するというものです。
このような未実現のキャピタルゲインに対して所得税を課する制度が創設された背景には,原則として株式等のキャピタルゲインについては株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされているところ,これを利用して巨額の含み益を有する株式等を所有したまま国外へ転出し,キャピタルゲイン非課税国(シンガポール等)において売却することにより,いずれの国においても所得税の課税を逃れることが可能となっていたことから,租税回避防止策として他の主要国と同様の措置を講じたものとされています。
<国外転出時課税制度の対象となる者>
次のいずれの要件にも該当する居住者です。
(1) 1億円以上の有価証券等,未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引を所有している者
(2) 国外転出の日前10年以内に,国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超である者
<申告手続等>
国外転出の時までに納税管理人の届出をした場合には国外転出をした年分の確定申告期限までに,国外転出の時までに納税管理人の届出をしないで国外転出する場合には国外転出の時までに,それぞれ確定申告(又は準確定申告)及び納税をする必要があります。
<納税の猶予>
国外転出時課税制度は未実現のキャピタルゲインに対して課する制度であることから,納税資金が無いといった事情を考慮し,一定の手続きを行った場合には,国外転出の日から5年間(延長の届出により最長10年間)納税の猶予が認められ,納税猶予期間の満了日の翌日以後4か月を経過する日が納期限となります。
納税猶予期間中は,各年の12月31日において所有している適用資産(国外転出時課税に係る納税猶予の適用を受けている対象資産)について,引き続き納税猶予の適用を受けたい旨を記載した継続適用届出書を翌年3月15日までに所轄税務署へ提出する必要があります。
上記継続適用届出書を提出期限までに提出しなかった場合や,適用資産の全部又は一部を譲渡又は贈与を行った場合等の一定の場合には,納税猶予の全部又は一部について期限が確定し,猶予されていた所得税及び猶予期間に応じた利子税を納付しなければなりません。
<帰国した場合の取扱い>
国外転出時課税の申告をした者が,国外転出の日から5年以内(納税猶予の適用を受け延長の届出をしている場合には10年以内)に帰国をした場合で,その帰国の時まで引き続き所有している対象資産については,国外転出時課税の適用がなかったものとして,帰国の日から4か月以内に更正の請求又は修正申告をすることで,課税の取消しをすることができます。
また,次の場合に該当するときにも,国外転出時課税の適用がなかったものとして,課税の取消しをすることができます。
(1) 国外転出時課税の申告をした者が国外転出の日から5年以内にその国外転出の時に所有していた対象資産を居住者に贈与した場合
(2) 国外転出時課税の申告をした者が国外転出の日から5年以内に亡くなったことにより,その国外転出の時に所有していた対象資産の相続又は遺贈による移転があった場合において,その相続又は遺贈により対象資産を取得した相続人及び受遺者の全員が居住者となった場合など
国外転出時課税制度は譲渡や贈与を行わなくても課税されるので見落としがちですが,海外転勤や留学の際には注意が必要です。
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