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相続土地の登記義務化について
被相続人が所有していた土地を相続した場合,一般的には相当の期間内に相続登記がなされますが,相続登記の申請は義務ではなく申請しなくても不利益を被ることは少ないことや,人口減少・高齢化等により地方を中心に土地所有意識の希薄化及び土地を利用したいというニーズの低下等の理由から,相続登記がなされないまま放置されることがあります。
このような相続登記がなされないまま放置された土地で,不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や,所有者が判明してもその所在が不明で連絡が付かない土地は「所有者不明土地」と定義されますが,遺産分割がされないまま相続が繰り返されますと,土地の共有者がねずみ算式に増加することとなり,土地所有者を特定することが更に難しくなっていきます。
この所有者不明土地が増加しますと,共有者が多数だったり一部が所在不明だったりということを原因として共有者間での合意形成が困難となり,公共事業や復旧復興事業が円滑に進まず,土地活用の弊害となります。
また,所有者不明土地は管理がなされず放置されることが多く,隣接する土地へも悪影響を及ぼします。
ちなみに,所有者不明土地問題研究会(一般財団法人国土計画協会)が2017年12月に発表した最終報告では,2016年時点における全国の所有者不明土地面積は約410万haで,九州本島の土地面積約367万haを超えているそうです。
この所有者不明土地問題は,高齢化の進展による死亡者数の増加等により,今後更に深刻化し,現在の所有者不明土地の探索が行われないとすると,2040年には北海道本島の土地面積に迫る水準である約720万haにまで増加すると同研究会は予測しています。
そこで,この所有者不明土地問題の解消に向けて法が整備され,
①相続登記義務化などを盛り込んだ民法・不動産登記法等の改正,
②相続などにより取得した土地を手放すための制度に関する法律「相続土地国庫帰属法」
が,2021年(令和3年)4月に成立しました。
<相続登記申請の義務化>
相続又は遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は,自己のために相続開始があったことを知り,かつ,不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に,
①相続を原因とする所有権移転登記申請(遺言または遺産分割協議に基づく場合または法定相続分の割合による場合)
②遺贈を原因とする所有権移転登記申請
③相続人申告登記の申し出
のいずれかの相続登記の申請等をすることが義務付けられました。
2024年(令和6年)4月1日から施行開始です。
正当な理由無く上記申請義務に違反した場合は,10万円以下の過料が科されます。
上記③の「相続人申告登記」とは新たに制定された制度で,期日までに遺産分割協議が成立しないといった理由から相続登記ができない場合であっても,登記官に対し,自らが登記名義人の相続人である旨を申し出ることにより,相続を原因とする所有権移転登記の申請義務が履行されたものと見なされます。
また,所有権の登記名義人は,住所等の変更日から2年以内に当該変更登記を申請することも義務付けられました。
正当な理由無く申請義務を怠った場合は,5万円以下の過料が科されます。こちらの施行日はまだ決まっていません。
<相続土地国庫帰属制度>
相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地の所有権を手放して,国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。
大まかな手続きの流れは,
①承認申請
②法務局による要件審査・承認
③申請者による負担金の納付
④国庫帰属
となります。
対象となる土地は相続又は遺贈により取得した土地に限られ,売買等で自ら購入した土地は対象外です。
申請できる土地には要件があり,土地上に建物が存したり,担保権が設定されていたり,境界が未確定である土地等は申請しても却下されます。
申請者は審査手数料と10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。
所有者不明土地を解消する目的とはいえ,それなりに厳格な要件を充足しなければならないため,本制度を利用して土地を手放すのは簡単ではなさそうです。
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