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就業規則は大丈夫ですか? (その2)
<承前>
雛型就業規則が怖い理由
(例1)
従業員が病気をして長期療養が必要となった場合に、その間の雇用を保障する制度として「病気休職制度」というものがあり、たいていの雛型就業規則にも記載されています。これは法律で定められた絶対的記載事項ではありません。
仮に、雛型就業規則に「休職可能期間1年」と記載されていて、それをそのまま自社の就業規則としてしまったら、従業員3人しかいない会社であっても1年間の休職が可能となり、1年後は復職を認めなければなりません。
大企業ならいざ知らず、中小企業にそんな体力があるでしょうか・・・。
(例2)
A社は秋の中途採用で弁護士資格を持っているという人を採用しました。会社は入社後すぐに大学の卒業証明書と弁護士試験の合格証書を持ってくるように指示しましたがなかなか持ってきません。業を煮やした総務部長が強く提出を求めると、「就業規則には入社後14日以内に必要書類を提出すること」と書いてあるという理由で14日目に提出します、とのこと。自社で定めたルールにそう書いてあるので総務部長もその日まで待つことにしました。ところが・・・その従業員は14日目に忽然と姿を消しました。会社の重要書類とともに・・・。
雛型就業規則ではなく、「入社日までに必要書類は提出すること」と規定しておけば防げた不正事件です。
(例3)
B社は営業に車を使用していました。運転免許証の有無は入社時に履歴書で確認していましたが、現物の確認やコピーの提出までは求めていませんでした。
先日、ある社員が人身事故を起こしました。しかも、無免許運転でした。その社員は5年も前に免許を取り消されていたそうです。就業規則で運転免許証の提出を定めていれば防げた事故でした。会社も監督責任を問われ、損害賠償が重くのしかかっています。
(例4)
社員が2週間後に退職したいと申し出てきました。2週間後なんていくらなんでも非常識だと社長は怒りましたが、「しかし社長、就業規則には「退職の際は14日前までに申し出ること」と書いてありますよ。」と反論されてしまいました。雛型就業規則をよく読みもしないでそのまま自社の就業規則にしてしまったためです。
(例5)
退職してゆく従業員の中には有給休暇を全て消化しようとする人がいます。引き継ぎが完璧に完了していればそれほど問題となりませんが、往々にして、退職してゆく従業員は「引き継ぎは完了した」と主張し、会社側は「まだ完了していない」とトラブルになりがちです。
そこで、就業規則に、「引き継ぎは○○部長の承認を得て完了する」としておけば、こうしたトラブルはある程度防げます。雛型就業規則ではこうした規定はまず記載されていません。
上記以外にも雛型就業規則による弊害は多々あります。
これを読んで心配になってきた方は、是非、自社の就業規則を読み返してみて下さい。
改訂が必要な事項があればお気軽にご相談ください。お手伝いします。
参考文献
下田直人『人が動く!組織が変わる!「勝ち組企業」の就業規則』(PHPビジネス新書・2008年)