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貸し駐車場に関する相続税の取扱いについて
未利用の土地を相続した場合や,誰も居住していない居住用不動産を相続した場合には,そのままではもったいないですから土地の有効活用を検討するものの,賃貸用建物を建築して賃貸事業を行うほどの事業リスクは負いたくない,というケースは意外と多いです。
このような場合には貸し駐車場としての土地活用が有効です。そこで,今回は貸し駐車場に関する相続税の取扱いを概観します。
貸し駐車場にはさまざまな形態があり,どの形態を選択するかはその土地の場所,地積,形状,投下できる費用等を総合勘案して決定することになりますが,選択した形態によって相続税における財産評価額及び小規模宅地等の特例の適用の有無に違いがあります。
駐車場の形態としては,おおよそ次の4つが考えられます。
- 月極駐車場(アスファルト舗装等)
- 月極駐車場(青空駐車場)
- コインパーキングを自営する。
- コインパーキング業者に賃貸する。
財産評価について
それぞれの形態における土地の財産評価ですが,上記1から3は,いずれもその土地の所有者が自ら貸し駐車場として利用していることになりますので,更地と同様にその土地の自用地としての価額により評価します。
貸地ではなく自用地として評価するのは,土地の所有者が,その土地をそのままの状態で(又は土地に設備を施して)貸し駐車場を経営することは,その土地で一定の期間,自動車を保管することを引き受けることであって,このような自動車を保管することを目的とする契約は,土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係であり,この場合の駐車場の利用権は,その契約期間に関係なく,その土地自体に及ぶものではないと考えられるためです。
上記4は,コインパーキング業者に土地を貸し,当該業者が貸し駐車場を経営しているケースですが,この場合の権利関係は土地の賃貸借契約に該当しますので,その土地の自用地としての価額から,賃借権の価額を控除した金額によって評価します。
この場合における控除する賃借権の価額は,おおむね次のように評価します。
自用地としての価額 × 次の区分に応じ次の割合
賃借権の残存期間05年以下・・・・・・2.5%
賃借権の残存期間05年超10年以下・・・5%
賃借権の残存期間10年超15年以下・・・7.5%
賃借権の残存期間15年超・・・・・・・10%
小規模宅地等の特例について
小規模宅地等の特例は,被相続人が所有していた自宅敷地や事業用土地の評価額を減額してくれる特例です。
貸し駐車場に対して考え得る小規模宅地等の特例は,特定事業用宅地等としての80%減額か,貸付事業用宅地等としての50%減額かのいずれかですが,大前提として,駐車場業は特定事業用宅地等に該当する「事業」から除かれており,その規模,設備の状況及び営業形態等を問わないこととなっています。
よって,貸し駐車場が特定事業用宅地等に該当することはありません。
次に,小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は,建物又は構築物の敷地となっている必要がありますから,アスファルト舗装や砂利敷き等の設備を有する必要があります。
そうしますと,上記1から4のうち,2の青空駐車場のみが小規模宅地等の特例の適用が無いということになり,他は貸付事業用宅地等としての50%減額が適用されます(面積制限有り)。
このように,貸し駐車場の形態によっては財産評価や小規模宅地等の特例の適用の有無に違いがあります。
貸し駐車場を始めるのはそれほど難しくないと思われますが,費用をかけずにロープと車止めだけで済ましますと,小規模宅地等の特例が適用されず,相続税におけるその影響額は小さくありませんので注意が必要です。
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