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不動産の売買契約中に相続が発生した場合の相続税の取扱いについて
不動産の売買契約を締結した後,まだ引渡しを受ける前に相続が発生してしまった場合の相続税の取扱いは以下の通りです。
<売主の場合その1>
売買契約を締結し手付金を受け取った後,まだ残金を受け取る前に売主が亡くなってしまったケース
→ 土地所有権は売主に残っているものの,もはやその実質は残金(売買残代金債権)を確保するための機能を有するに過ぎず,土地所有権そのものが独立して課税財産を構成しているわけではないと考え,課税財産となるのは土地ではなく売買残代金債権となります(最高裁昭和62年12月5日第二小法廷判決)。
よって,相続税の課税対象となるのは不動産ではなく売買残代金債権ですので,路線価等を用いて評価することはできません。不動産ではありませんので小規模宅地等の特例の適用もありません。この場合,一般的には不動産としての評価額よりも債権としての評価額の方が高くなります。
また,売主が負担することになっていた仲介手数料その他の費用で相続開始時において未払いのものについては,相続税の債務控除の対象となります。
<売主の場合その2>
売買契約を締結し手付金を受け取った後,まだ残金を受け取る前に売主が亡くなってしまい,その後相続人が当該契約を解除したケース
→ 相続税の納税義務は相続開始の時に成立するものと解され,たとえ相続開始後に相続人が売買契約を解除した場合であっても,それは被相続人から契約上の地位を承継した相続人の意思によるものであって,相続開始時において売買残代金債権が確定的に被相続人に帰属していることに変わりはありません。
よって,上記その1と同様に,相続人が契約解除をした場合であっても売買残代金債権という相続財産が相続税の課税対象となります。
不動産の売買契約を売主が解除する場合,一般的には既に受領した手付金の2倍を返金しますが,手付金を2倍返金した上に売買残代金債権という相続財産に相続税が課税されることになりますので,経済的な負担は大きくなります。
<買主の場合>
・原則的取扱い
売買契約を締結し手付金を支払った後,まだ残金を支払う前に買主が亡くなってしまったケース
→ 契約に基づく代金決済が未了の場合,買主は相続開始時点では所有権を有しておらず,相続税の課税財産に含まれるものは,土地の所有権移転請求権等の債権的権利です(前出最高裁判決)。また,被相続人から承継した債務は,相続開始時における残代金支払債務となります。
よって,相続税の課税対象となるのは所有権移転請求権(一般的には当該売買契約における購入金額)となります。また,残代金支払債務(一般的には手付金以外のこれから支払う残代金)は債務控除することができます。結果として,純額である手付金が相続税の課税対象になることと金額的には同じになります。
・例外的取扱い
不動産の売買契約を締結した日から相続開始の日までの期間が通常よりも長期間である等,購入金額が相続開始時点における所有権移転請求権の価額として適当でない場合には,別途個別に評価した金額が所有権移転請求権の価額となります。
また,原則的取扱いにかかわらず,その売買契約により購入する不動産を相続財産とする相続税の申告をすることも認められます。この場合の不動産の評価額は,路線価等を基に財産評価基本通達により評価した金額となります。
(参考)月刊税理2018年11月号
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