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宅地評価と特定路線価について
相続税及び贈与税を申告する場合における宅地の評価は,原則として,市街地的形態を形成する地域にある宅地については「路線価方式」により,それ以外の宅地については「倍率方式」により行います。
評価しようとする宅地が路線価方式と倍率方式とのいずれにより評価するかは,各国税局が定める「財産評価基準書」に示されています。
財産評価基準書で定められている路線価及び倍率は,売買実例価額,地価公示価格,不動産鑑定士等による鑑定評価額及び精通者意見価格等を基として設定され,平成3年分までは前年の7月1日時点を評価時点とし,地価公示価格と同水準の価格の70%程度を目途に定められていましたが,平成4年分からは,評価時点を地価公示価格の評価時点にあわせてその年の1月1日とし,評価割合は80%程度に引き上げられました。
なお,評価割合が地価公示価格の80%程度とされている理由は,土地の価額には相当の値幅があることや,路線価等は相続税及び贈与税の課税に当たり1年間適用されるため,評価時点であるその年の1月1日以後の1年間の地価変動にも耐え得るものである必要があること等の評価上の安全性を配慮しているためです。
路線価は,宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定され,標準的な宅地の1㎡当たりの価額(千円単位)で示されています。あくまでも標準価額ですので,実際に評価する宅地が上記標準的な宅地と状況や形状等が異なる場合には,その標準価額を基礎として画地調整を行う必要があります。
なお,これらの画地調整を行うために,国税庁が発遣している「相続税財産評価に関する基本通達(通称:財産評価基本通達)」において,各種補正率が定められています。
財産評価基準書の「路線価図」や「評価倍率表」はインターネットで公表されており,令和7年1月時点では平成30年分から令和6年分まで確認することができます。
令和7年分については,例年にならえば7月初旬に公表されるものと思われます。
ところで,財産評価基準書や財産評価基本通達における「路線」とは,不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいうものとされていますが,現実には特定の者のみが通行する道路(私道など)にしか接していない宅地というものも存在しますので,これらの宅地の評価をどうするのか,という問題があります。
そこで,財産評価基本通達では,路線価地域内において,路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には,当該道路を路線とみなして当該宅地を評価するための路線価を,納税義務者からの申出等に基づき設定することができる,と定めています。これを「特定路線価」といいます。
この特定路線価は,その特定路線価を設定しようとする道路に接続する路線及びその道路の付近の路線に設定されている路線価を基に,その道路の状況,地区の別等を考慮して,税務署長が評定します。
なお,特定路線価は,路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価するための路線価であることから,路線価の設定されていない道路と路線価の設定されている道路(路線)とに接している宅地の評価に当たっては,その路線価の設定されていない道路に設定された特定路線価についての「側方路線影響加算」,「二方路線影響加算」又は「三方又は四方路線影響加算」の適用はありません(財産評価基本通達では正面のみが道路に接している宅地よりも,側面や裏面なども道路に接している宅地の方が評価が高くなりますが,これらを考慮しない,という意味です)。
特定路線価の設定を申出る場合には「特定路線価設定申出書」を提出することになりますが,その提出先は原則として納税地を所轄する税務署です。
回答を得られるまでに1か月程度は要しますので,申告期限までに間に合うよう余裕をもって申出をする必要があります。
また,実務的には,特例路線価が設定された場合には,必ずその特定路線価を使用して評価しなければならないと考えられています。
特定路線価を設定してもらいながら他の方法で評価すると,特定路線価による評価額に修正するよう慫慂される可能性が高いので注意が必要です。