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印紙税の基礎

2024-07-17(水) 16:30:50

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印紙税は,日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などに課税される税金で,印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書が課税の対象となります。

原則として,作成した文書について文書の作成者が自ら課税文書に該当するか否かを判断し,税相当額の収入印紙を課税文書に貼付して消印することにより納付する方式(自主納付方式)を採用しています。

 

課税文書に該当するか否かは文書の全体を一つとして判断し,その判断に当たってはその名称や記載されている文言により形式的に行うのではなく,その文書に記載されている文言,符号等を用いることについての当事者間における了解や慣習等を加味して総合的に行います。

例えば,文書に取引金額そのものの記載はないが,文書に記載されている単価,数量等により当事者間において取引金額が計算できる場合はそれを記載金額とし,また,売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり,その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば,その文書は売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになります。

また,印紙税は課税事項を証明する目的で作成される文書を課税対象とするものですから,一つの事実について複数の文書を作成しても,それが課税事項を証明する目的で作成されたものであれば,証明力の強弱を問わず複数の文書全てが課税対象となります。

後日に正式文書を作成する予定で一時的に作成する仮契約書であっても,当該仮契約書が課税事項を証明する目的で作成されたものであるときは,やはり課税文書に該当します。

なお,同一法人等の内部の取扱者間又は本店,支店及び出張所間等で,当該法人等の事務の整理上作成する文書は課税文書に該当しません。

 

印紙税の税額はその文書に記載された「記載金額」により算定されますが,「記載金額」とは,契約金額,受取金額など,その文書の課税事項に係る金額として,その文書に記載されている金額をいいます。

予定金額などが記載されている場合には,その記載されている予定金額,概算金額,最高金額又は最低金額がその文書の記載金額となります。

月単位等で契約金額を定めている契約書で契約期間の記載があるものは,契約金額に契約期間の月数等を乗じて算出した金額を記載金額とします。なお,契約期間更新の定めがあるものについては,更新前の期間のみを記載金額算出の基礎とし,更新後の期間は考慮しません。

消費税額が区分記載されている場合又は税込価格及び税抜価格が記載されていることにより,その取引に当たって課されるべき消費税額が明らかである場合には,その消費税額は記載金額に含めません。

 

印紙税の納税義務は課税文書を作成した時に成立し,課税文書の作成者がその作成した課税文書について印紙税を納める義務があります。

課税文書の作成者とは,原則として,その文書に記載された作成名義人です。現実に誰が作成したか,その文書の効力は誰に帰属するかを問わず,その文書に記載された作成名義人が作成者となります。

ただし,法人などの役員又は従業員がその法人などの業務又は財産に関して作成したものについては,役員又は従業員が作成名義人となっていても,その法人などが作成者となります。

 

一の課税文書を2以上の者が共同して作成した場合には(契約書を2通作成して双方1通ずつ保管する場合など),その2以上の者はその作成した課税文書について連帯して印紙税を納める義務があります。この場合,そのうちの1人がその課税文書に係る印紙税を納めたときは,他の者の納税義務は消滅します。

よって,実務でよく見受けられる契約当事者の一方が印紙を貼付していない場合において,適正に印紙を貼付している他方に課税当局が印紙税の未納を指摘したとしても,他の者が負担することになっているという抗弁は認められません。

 

課税文書の作成者が,その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には,その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち不納付税額の3倍)に相当する過怠税が徴収されます。

 

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