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未分割財産の分割が確定した場合の軽減規定について
被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者の課税価格の合計額が,遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合において,配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用がないものとして相続税額の計算を行ったときに納付すべき相続税額が算出される相続人又は受遺者は,その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に,相続税の申告書を提出しなければなりません。
また,配偶者に対する相続税額の軽減(相法19の2)や小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(措法69の4)の適用を受ける場合には,申告書の提出が適用要件となっていることから,その規定の適用により納付すべき相続税額が零になる場合であっても,相続税の申告書を提出しなければなりません。
ところで,配偶者に対する相続税額の軽減と小規模宅地等の特例は,相続税の申告期限までに遺産分割が確定していない財産については適用することができないのですが,その財産が申告期限から3年以内に分割された場合には,その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に限り,これらの規定を適用して更正の請求をすることができます。
すなわち,申告期限までに遺産分割が確定しない場合には各相続人又は包括受遺者は民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従ってその財産を取得したものとして課税価格を計算して,一旦,これにより相続税の申告をし,その後,申告期限から3年以内に未分割財産の分割が確定した場合には,その確定した内容で相続税額を再計算し,この際に,上記配偶者に対する相続税額の軽減及び小規模宅地等の特例を適用して計算することができ,この再計算した相続税額が,当初申告に係る相続税額よりも増加した場合には修正申告書を,減少した場合には更正の請求を,新たに申告納税義務が発生した場合には期限後申告書をそれぞれ提出することができます。
なお,申告期限までに遺産分割は確定していないが,申告期限から3年以内に分割が確定した場合には配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けようとするときは,当初申告書を提出する際に,分割されていない事情及び分割の見込みの詳細を記載した「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります。
この分割見込書を提出しておかないと,原則として,たとえ申告期限から3年以内に未分割財産の分割が確定した場合であっても,配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。
このように,相続税の申告期限から3年以内に遺産分割を行うことが配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の特例の適用要件ですが,やむを得ない事情がある場合には,税務署長の承認を得て,3年という分割制限の期間を伸長することができます。
この場合におけるやむを得ない事情とは,相続に関する訴えの提起がされている,和解又調停の申立てがされている,民法の規定により分割が禁止され又は相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている,その他税務署長がやむを得ない事情があると認める場合をいいます。
これらに該当する場合には,それぞれについて分割できることとなった日から4か月以内に分割を行えば,上記と同様に更正の請求をして,配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
ここで注意したいのは,上記の分割制限の期間を伸長したい場合には,申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出しておく必要があることです。
この承認申請書の提出が期間内になかった場合には,やむを得ない事由が解消し未分割財産の分割が確定した場合であっても,配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。
以上が未分割財産の分割が確定した場合の軽減措置の適用についての概要ですが,上記の分割見込書及び承認申請書は,いずれも未分割財産の分割が確定するよりも前に提出しておかねばならい書類であり,特に承認申請書はその提出を失念しやすいので注意が必要です。
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