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離婚時の財産分与に係る税金について
離婚時に夫婦間で行われる財産分与が金銭ではなく不動産等の資産で行われた場合には,財産分与をする側と財産分与を受ける側の双方において,それぞれいくつか税金に関して留意すべき事項があります。
<財産分与をする側の課税関係>
財産分与が土地建物等の不動産で行われた場合には,その財産分与をした者は,その財産分与をした時において,その時の時価により当該不動産を譲渡したものとして取り扱われます。
これは,離婚成立とともに発生した財産分与義務が,不動産の譲渡という財産分与により消滅し,その財産分与義務の消滅自体が一つの経済的利益を享受したと考えられるためです。
よって,不動産の保有期間中に生じた値上がりによる増加益があれば,一般の不動産譲渡と同様に所得税及び住民税が課税されます。
ところで,離婚成立後に財産分与をした不動産が居住用家屋及びその敷地である場合には,一定の要件を充たせば居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用があります。
また,当該不動産の所有期間が,その財産分与をした年の1月1日において10年超であるなど一定の要件を充足する場合には,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の適用もあります。
ただし,これらの特例は,譲渡の相手方が当該個人の配偶者,直系血族,その他特別な関係がある者等の場合には適用がありませんので,これらの特例の適用を受けようとする場合には離婚成立後に財産分与をする必要があります。
財産分与をした財産が上場株式の場合には不動産のような特例はありませんので,通常どおり所得税等が課税されます。
上場株式そのものを財産分与しますと自身で譲渡所得を計算しなければならないため,相手方が上場株式そのものを望んでいない場合には,特定口座で換金後に現金で財産分与をした方が良いかも知れません。
<財産分与を受ける側の課税関係>
離婚により相手方から財産分与を受けた場合,通常は贈与税が課税されることはありません。
これは,当該財産分与は相手方から贈与を受けたものではなく,夫婦間における財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権という権利に基づき給付を受けたものと考えられるためです。
ただし,財産分与を受けた財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他全ての事情を考慮してもなお多過ぎる場合や,離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合には,贈与税が課税される可能性があります。
また,財産分与を受けた財産が不動産であった場合における不動産取得税については,原則として課税されますが,明確な規定は存在しないものの過去の裁判事例から,その財産分与が実質的に夫婦の共有財産の分割と認められるものであり,また,婚姻中の財産関係を清算する趣旨のものである場合には課税しない取扱いとなっています。
実務的には,所有権移転登記後に課税当局から送付されてきた不動産取得税の申告書に上記事情を記載の上,それを証明する必要書類を添付して提出するということになるかと思います。
なお,上記事情に該当しない場合であっても,財産分与を受けた不動産に本人が居住する場合には,既存住宅(中古住宅)を取得した場合における不動産取得税の軽減措置の適用を受けられることも多く,不動産取得税が課税されるケースは少ないと思われます。
財産分与を受けた財産が不動産等の譲渡所得の基因となる資産であった場合には,財産分与を受けた者は,その財産分与を受けた日に,その時の時価(=財産分与をした者の譲渡所得計算上の収入金額)で当該資産を取得したこととなります。
よって,財産分与を受けた者が,その後,当該資産を譲渡する場合には,上記取得金額及び取得日をもとに,譲渡所得の計算を行うことになります。
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