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納税管理人と特定納税管理人

2023-09-18(月) 15:12:17

カテゴリー:

<納税管理人>

個人である納税者が国内に住所及び居所を有せず又は有しないこととなる場合において,納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは,その者は,当該事項を処理させるため,国内に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければなりません。

 

納税管理人の事務範囲,すなわち上記「納税申告書の提出その他国税に関する事項」とは,次に掲げる事項(不服申立てに関する事項を除く。)をいいます。

(1)国税に関する法令に基づく申告,申請,請求,届出その他書類の作成及び提出

(2)税務署長等が納税者に対して発する書類の受領及びその納税者に対するその書類の送付

(3)納税者が税務署長等に対して提出する書類の受領及びその税務署長等に対するその書類の提出

(4)国税の納付及び還付金等の受領

なお,納税管理人は上記(1)~(4)に掲げる事項の一部のみを処理することはできないことになっています。

 

納税管理人を定めたときには,その納税者の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。

この届出書を提出した以後,税務署が発送する書類は納税管理人あてに送付されますが,確定申告書は納税者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

また,帰国した場合など,先に選任していた納税管理人を解任する場合は,納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の解任届出書」を提出しなければなりません。

なお,納税管理人は法人でも個人でも構いません。

 

<特定納税管理人>

近年,非居住者又は外国法人による国境を越えた経済活動が活発化しており,これにより国内に拠点を有しない非居住者又は外国法人においても,国内での課税関係が発生する場面が増えてきているところ,これらの納税者が納税管理人の選任をしていれば問題ありませんが,そうでない場合には納税管理人の選任について税務当局側に法令上取り得る措置がないため,このような納税者に対する税務調査が困難な場合があるという課題がありました。

 

そこで,令和3年税制改正により,従来の「納税管理人」制度に加え,新たに「特定納税管理人」制度が創設され,納税者から自発的に納税管理人の届出がない場合において,税務当局が納税者に対して納税管理人の指定及び届出を要請しても応じないなど一定の要件を満たすときは,納税地を所轄する税務署長等が国内に住所又は居所を有する一定の者(国内便宜者)を納税管理人(特定納税管理人)に指定することが可能とされました。

 

特定納税管理人となり得る「国内便宜者」とは,例えば次のような者をいいます。

  • 国内に拠点を有しない非居住者や外国法人が国内に賃貸不動産を有する場合における国内の不動産管理会社
  • 国外事業者が国内においてデジタルコンテンツを配信している場合におけるプラットフォーム運営事業者

 

特定納税管理人が処理すべき事項(特定事項)は,税務当局が納税者に対して発する書類の受領及び受領した書類の納税者への送付,納税者が税務当局に対して提出する書類の受領及び受領した書類の税務当局への送付その他これに類する事項とされていますので,特定納税管理人が納税者に代わって納税申告書の提出や納税に係る義務を負うものではありません。

この点は納税管理人の事務範囲と異なります。

 

税務当局による特定納税管理人の指定は,「国税に関する法律に基づく処分」に該当しますので,その指定に不服がある場合には,①その所轄税務署長等に対する再調査の請求又は②国税不服審判所長に対する審査請求といった不服申立てをすることができます。

また,これらの不服申立てを経た後,行政事件訴訟法等の定めるところにより訴訟を行うことができることとされています。

 

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