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特別受益、寄与、特別の寄与に係る相続税の課税関係

2023-07-08(土) 10:22:16

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相続人の中に被相続人から遺贈や生前贈与を受けた者がいる場合や,被相続人の財産の維持又は増加について特別の貢献をした相続人や親族がいる場合には,それらを考慮せずに遺産分割を行うと,相続人間の公平を図れない場合があります。

そこで,民法にはこれらの調整を図る制度がいくつか用意されています。

 

<特別受益>

相続人の中に,被相続人から,①遺贈,②婚姻又は養子縁組のための贈与,③生計の資本としての贈与を受けた者がいる場合には,被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に,その遺贈又は贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし,それを相続分で按分し,その金額からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とします。

 

(具体例1)

被相続人:夫

相 続 人:妻,子A,子B

相続財産:5,000万円

特別受益:子B1,000万円

 

イ.特別受益を考慮しない場合

妻  2,500万円=5,000万円×1/2

子A 1,250万円=5,000万円×1/4

子B 1,250万円=5,000万円×1/4

 

ロ.特別受益を考慮する場合

妻  3,000万円=(5,000万円+1,000万円)×1/2

子A 1,500万円=(5,000万円+1,000万円)×1/4

子B   500万円=(5,000万円+1,000万円)×1/4-1,000万円

 

このように,法律上は相続人間の公平を図ることができるようになってはいるものの,実務的には何が特別受益なのかの判断は非常に難しく,家庭裁判所の遺産分割の場面では紛糾することが多いようです。

 

 

<寄与分>

相続人の中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいる場合には,被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から,その寄与分を控除したものを相続財産とみなし,それを相続分で按分し,その金額に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とします。

 

(具体例2)

被相続人:夫

相 続 人:妻,子A,子B

相続財産:5,000万円

寄 与 分:子B1,000万円

 

イ.寄与分を考慮しない場合

具体例1のイと同じ

ロ.寄与分を考慮する場合

妻  2,000万円=(5,000万円-1,000万円)×1/2

子A 1,000万円=(5,000万円-1,000万円)×1/4

子B 2,000万円=(5,000万円-1,000万円)×1/4+1,000万円

 

特別受益と同様に,制度としては相続人間の公平を図るために用意されている寄与分ですが,事実認定の問題でもあり,その内容と金額の確定は非常に難しいです。

 

 

<特別の寄与>

被相続人の財産の維持又は増加について,特別の寄与をした者が相続人である場合には前述の寄与分の適用がありますが,相続人でない場合には財産を取得することができません(遺贈を除く)。

 

こうした問題に対処するため,平成30年に民法が改正され,被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができるようになりました。

 

(具体例3)

被相続人:夫

相 続 人:子A(妻と子Bは既に死亡) ※子Bの配偶者(特別寄与者・相続人ではない)

相続財産:5,000万円

寄 与 分:子Bの配偶者500万円

 

イ.特別寄与料を考慮しない場合

子A 5,000万円

 

ロ.特別寄与料を考慮する場合

子A 5,000万円(別途500万円債務控除)

子Bの配偶者 500万円(遺贈とみなされる)

 

当事者間で特別寄与料を協議することも制度上は可能ですが,利害が対するため当事者間での協議は現実的には難しく,実務的には家庭裁判所に調停の申立てをすることになりそうです。

 

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