HOME >BLOG

BLOG

休眠会社等の整理作業(みなし解散)と法人税の関係

2023-01-27(金) 16:25:20

カテゴリー:

株式会社を設立した後に登記事項に変更が生じた場合は,その変更後2週間以内に変更登記をする必要があります。

商号を変更した場合や本店所在地を変更した場合は変更登記を失念することは少ないと思いますが,役員の任期満了による変更登記は意外と忘れがちなので注意が必要です。

 

株式会社の取締役には任期があり,会社法の規定により原則として2年,定款の規定により最長10年まで延長が可能ですので,少なくとも10年に一度は役員変更登記がされることになります(任期満了後,間を置かずに同じ人が役員に再任された場合も変更登記が必要です)。

 

ところで,上記のような登記義務があるにも関わらず長期間登記がされていない株式会社,一般社団法人又は一般財団法人は,既に事業を廃止し実体がない状態となっている可能性が高く,このような休眠状態の株式会社等の登記をそのままにしておくと,商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになりかねません。

 

そこで,平成26年度以降は,株式会社については最後の登記から12年を経過しているもの,一般社団法人又は一般財団法人については最後の登記から5年を経過しているものについては,法務大臣による官報公告を行い,2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出か役員変更等の登記の申請がない限り,みなし解散の登記をすることとしています。

 

ちなみに,令和3年までに約65万社の株式会社がみなし解散の登記をされています。

 

法務大臣の官報公告は毎年10月頃に行われ,対象となる会社や法人に対しては,管轄の登記所より,法務大臣による公告が行われた旨の通知書が送付されます。

 

登記を失念していて,官報公告されてしまった場合であっても,公告から2か月以内に必要な登記申請をするか,あるいは「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすると,みなし解散登記を回避することができます。

 

ただし,「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしても,必要な登記申請を行わない限り,また翌年度も休眠会社等の整理作業の対象となります。

 

また,公告から2か月以内に登記申請をした場合であっても,本来申請すべき時期に登記を怠っていた事実は解消されませんので,裁判所から100万円以下の過料が科されます。

 

このように,みなし解散登記は無予告でいきなりされるわけではありませんが,事業を継続しているにも関わらず,登記所からの通知書にも気付かずにみなし解散登記がされてしまった場合であっても,みなし解散登記後3年以内であれば,会社継続の登記をすることで清算中の会社を復活させることができます。

 

ただし,みなし解散登記がされてしまうと,法人税との関係で不利益を被る場合があります。

 

まず,みなし解散登記がされますと,その解散の日で事業年度が一旦終了しますので,その解散の日から2か月以内に法人税の申告書を提出する必要があります。

 

次に,みなし解散登記がされて清算中となった法人が会社継続の登記をした場合も,会社継続の日の前日で事業年度が一旦終了しますので,そこから2か月以内に法人税の申告書を提出する必要があります。

 

更に,会社継続の日から本来の会計期間の末日までが一事業年度となりますので,ここでも2か月以内に法人税の申告書を提出する必要がありますので,場合によっては一年の間に3回も法人税の申告書を提出する必要があります。

 

これだけでも充分負担ですが,通常,みなし解散登記がされたことに気付くのは上記それぞれの申告期限を経過した後だと思いますので,多くのケースで結果として2期連続して期限内申告を怠ったこととなり,青色申告の承認が取り消される可能性が高いです。

 

青色申告の承認が取り消されますと,青色申告のメリットである欠損金の繰越控除や繰戻還付,少額減価償却資産の損金算入の特例,青色申告を要件とする各種特別控除等の適用を一切受けることができなくなり,その影響は甚大です。

 

くれぐれも,みなし解散登記をされることのないようご注意下さい。

 

※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。