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改正された賃上げ促進税制について

2022-07-17(日) 12:56:06

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創設10年になる賃上げ促進税制は大企業向けと中小企業向けがあり,ほぼ毎年改正が繰り返されてきました。

今年も改正され,改正前よりは適用しやすくなりましたので,以下,賃上げ促進税制のうち中小企業向けの制度の概要をお知らせ致します。

中小企業向け賃上げ促進税制は,中小企業者等が,前年度より給与等を増加させた場合に,その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。

 

<中小企業者等>

中小企業者等とは概ね次の法人をいいます。

・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

(ただし,発行済株式又は出資の1/2以上を一定の大規模法人に所有されている法人を除く)

・資本又は出資を有しない法人で従業員1,000人以下

・協同組合等

 

<適用要件と税額控除額>

通常の場合

国内雇用者に対する給与等の支給額が前年度よりも1.5%以上増加した場合…増加額の15%を法人税額から控除できます。

 

上乗せ要件(その1)

国内雇用者に対する給与等の支給額が前年度よりも2.5%以上増加した場合…通常15%+上乗せ15%=30%を法人税額から控除できます。

 

上乗せ要件(その2)

教育訓練費(後述参照)の額が前年度よりも10%以上増加した場合…通常15%+上乗せ10%=25%を法人税額から控除できます。

※二つの上乗せ要件を満たすと最大控除率は15%+15%+10%=40%となります。

※改正前の経営力向上要件は廃止されました。

 

<主な用語の意義>

・国内雇用者…国内事業所の使用人でパート,アルバイト,日雇労働者を含みますが,役員及び役員の特殊関係者等は含みません。

・給与等…俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいいます。退職金は含みません。

・雇用者給与等支給額…先述の「国内雇用者」に対する「給与等」のことです。前年度のものは「比較雇用者給与等支給額」といいます。

なお,増加率を算定する場合においては,給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額を控除することになっています。具体的には各種補助金や助成金,親会社からの出向負担金等です。

ただし,雇用調整助成金等の雇用安定助成金額は控除しなくて良いことになっています。

 

・教育訓練費…国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ,又は向上させるために法人が支出する費用をいいます。具体的には,教育訓練を法人自ら行う場合の外部講師への謝金や外部施設使用料等,他者に教育訓練を委託する場合の研修委託費や外部研修参加費等。

 

<適用期間>

令和4年4月1日から令和6年3月31日までに期間内に開始する事業年度が対象です。

 

<実務的対応>

本制度を利用するためだけに月額賃金を増加させるのは,経営的にはいささかハードルが高いように思いますが,例えば,当年度給与等の支給額の増加率を事前に試算しておき,賞与だけを当初支給予定額よりもアップすることで本制度の適用を受けるというのは有り得るように思います。

また,通常の場合の15%税額控除の適用を受けられそうだと予め判明していれば,上乗せ要件(その2)である教育訓練費について追加で検討するということも有り得そうです。

いずれにしても事前に給与等の増加率をシミュレーションしておくと,余裕をもって対応できそうです。

 

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