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現物出資

2021-11-26(金) 11:51:39

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<概要>

法人設立や増資をする際に,金銭以外の財産を出資することを現物出資といいます。

現物出資は工夫次第で事業承継や相続税対策にも有効です。

 

まず,現物出資することができる財産ですが,土地や建物,器具備品,車両運搬具,有価証券等はもちろんのこと,貸付金等の債権を出資することもできますし,事業単位で現物出資することもできます。

現物出資は金銭以外の財産での出資ですので,出資された財産の価額が適正であるか調査するために原則として裁判所に検査役の選任を申し立てる必要があります。

 

しかし,現物出資した財産の価額の総額が500万円以下である場合や,定款に記載された財産の価額が相当であると弁護士,公認会計士,税理士等の専門家から証明を受けた場合(不動産の場合には不動産鑑定士)には,検査役の調査が不要となりますので,実務的には検査役の選任不要の場合が多いように思います。

 

現物出資という行為は法人に資産を譲渡したことと同じであるため,後述する適格現物出資に該当する場合を除き,現物出資した人の所得税(現物出資したのが法人である場合には法人税)の課税対象となります。

また,現物出資した人又は法人が消費税の課税事業者である場合には,現物出資した財産の種類によっては消費税の課税対象となります。

 

前述のとおり個人が現物出資する場合には所得税の課税対象となってしまうため,多額の含み益を抱えた不動産等を現物出資する場合には納税も考慮したタックスプランニングが必要となりますが,法人が現物出資する場合は一定の要件に該当すれば「適格現物出資」として出資先の法人は簿価のまま財産を引き継ぐことができるので,含み益に対する課税を避けることができます。

よって,事業承継や相続税対策で現物出資を検討する場合には,適格現物出資の要件を充足することが重要となります。

 

<適格現物出資の要件>

完全支配関係がある法人間における適格現物出資の要件は次のとおりです。

①現物出資した法人(現物出資法人)に対し,現物出資を受けた法人(被現物出資法人)の株式以外の資産が交付されないこと。

②現物出資前に完全支配関係があり,現物出資後の完全支配関係の継続が見込まれていること。

 

①の要件は,非現物出資法人の株式のみを対価とすることが条件であり,受け入れた財産の価額が予定していた資本金よりも多いからといって“お釣り”として現預金を渡してしまうと適格要件を充足しなくなります。

 

②の要件は,一つの法人が単独で現物出資により新たな法人(100%子会社)を設立した場合には,現物出資後において完全支配関係の継続が見込まれていれば適格要件を充足します。

 

尚,上記以外に,外国法人に対して国内財産等を出資する場合や外国法人が内国法人に国外財産等を出資する場合等は適用除外とする規定がありますが,ここでは割愛します。

 

<活用例>

よくある事例としては,社長が有する自身が経営する会社への貸付金を現物出資して増資し,貸付金という相続財産を消滅させる,いわゆるDES(デット・エクイティ・スワップ)があります。

会社の財政状態にもよりますが,法人税負担を避けつつ,社長の相続財産を減少させることができます。

 

あるいは,同族会社の株価評価を下げたいといった場面では,所有している賃貸不動産を現物出資して子会社を設立し,子会社株式の評価を通じて親会社の株価を下げるといった方法が考えられます。

 

法人設立や増資はもちろんのこと,財産の移転という視点で現物出資を活用すると,意外とうまくいくことがありますので,検討してみると良いかも知れません。

 

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