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必要経費と家事関連費
事業活動を明確に区分できる法人と異なり,事業を営む個人は,商行為として行動する場合と,日常の家庭生活として行動する場合とがありますので,これら両方に関連する費用を支出した場合には,どこまでが必要経費として認められるのか,その判断が非常に難しい場合があります。
まずは原則論ですが,所得税法では,家事費及びこれに関連する経費(家事関連費)は必要経費に算入できないことになっています。しかし,例外的に下記については必要経費への参入を認めています。
- 家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
- (略)
このように家事関連費であっても事業に必要だと明確に区分できる部分は必要経費に算入することができるのですが,所得税法はその区分方法を規定していません。
よって,納税者一人ひとりが,自身が営む事業の内容や規模等を総合勘案して,主観的でない客観的な基準を用いて区分する必要があります。
支払家賃を例にとると,個人事業主の場合,店舗併用住宅のように住宅を兼ねた店舗や事務所で事業を営む人も多いですが,店舗部分と住宅部分とが階や部屋で明確に分かれている場合には比較的簡単に必要経費部分を算出できますが,そうでない場合は税務上のリスクがあると言わざるを得ません。
過去の裁判例(注1)においては,リビング及びダイニングキッチンの一部が業務専用スペースであるとした納税者の主張を,家族が普通に生活するスペースでもあり区分が明確でないとして退けた事例があります。
よって,税務上のリスクを回避するためには,少なくとも業務専用の部屋を設ける等の対応が望まれます。
水道光熱費や火災保険料,自己所有家屋の場合は固定資産税や減価償却費なども,業務専用の部屋を設けることで,支払家賃と同様に必要経費部分を合理的に算出することができ,一定の税務リスクを回避できそうです。
次に交際費ですが,所得税法には交際費の意義に関する規定がありません。
一方,法人税法にはその規定があるため本質的には同じ性質であると認識して差し支えないと思われますが,所得税法では「専ら業務の遂行上直接必要なものに限られる」という規定になっていますので,法人税法よりも交際費の範囲が限定的になっていることに注意が必要です。
過去の裁判例(注2)においては,医師が情報交換を目的として同業者と会食した際の飲食代や建築士との食事をしながらの打合せ費用を必要経費として計上したところ,業務上直接必要でないという理由で否認された事例があります。
いささか厳しい判断であるとは思いますが,税務リスクを回避するためには,これらの費用が業務上直接必要であることを説明できるように事前に準備しておくよりほか仕方ありません。
旅費交通費が必要経費に算入されるか否かはその目的地が業務とどのような関連性を有するかで判断しますので,通常は比較的容易に判断できると思われますが,宿泊を伴うような場合は金額も高額になりがちですので注意が必要です。
業務の前後に個人的所用をこなす場合には旅費を業務と非業務に按分する必要がありますし,家族同伴の場合には同伴者に係る部分は必要経費に算入できません。
家族旅行を兼ねた出張旅費の場合,きっかけは業務上の出張であっても,宿泊先や旅行経路,旅行期間等を総合勘案すると,もはや主目的が業務とはいえない場合も多く,このような費用の計上は税務リスクが高まりますので,合理的な基準での旅費の按分は必須となります。
(注1)東京地裁H25.10.17判決
(注2)H25.7.9裁決
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