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返還を要しない保証金等の収益計上時期

2018-12-21(金) 13:20:56

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賃貸借契約に基づき建物を賃貸する場合,一般的には保証金或いは敷金といった名目で一定の金額を預かりますが,これが単なる「預り金」であれば受け入れた時点で収益計上する必要はありません。

 

ところが,よく見受けられる事例として,契約締結当初から予め返還を要しない部分の金額が定められていたり,一定期間経過するごとに一定の金額が返還を要しないこととなる契約となっていたりしますが,これらについては返還を要しないのですから,その返還を要しないことが確定した時点で収益計上する必要があります。

 

具体的には次のようなケースが考えられます。

 

(1) 契約当初から返還不要額が確定している場合

保証金として100万円を受け取り,そのうち30%は償却金とし,残額は賃貸借契約終了後に返還するという場合

100万円×30%=30万円は契約締結時に返還を要しないことが確定しているため,契約締結時において収益計上します。

 

(2) 一定期間経過するごとに返還不要額が増加する場合

賃貸期間10年の賃貸借契約の保証金100万円について,3年以内に解約した場合は全額を返還し,5年以内に解約した場合は80%を返還し,以後解約した場合は60%を返還するという契約内容の場合

100万円×20%=20万円は3年経過した時点で返還を要しないことが確定するためこの時点で収益計上します。

次に,100万円×(40%-20%)=20万円は5年経過した時点で返還を要しないことが確定するためこの時点で収益計上します。

 

(3) 一定期間経過することに返還不要額が減少する場合

賃貸期間10年の賃貸借契約の保証金100万円について,3年以内に解約した場合は60%を返還し,5年以内に解約した場合は80%を返還し,以後解約した場合は全額を返還するという契約内容の場合

契約が終了しない間は収益計上する必要はありませんが,満了前に契約が終了した場合には,その時点で返還を要しない部分の金額を収益計上する必要があります。

3年以内に解約となった場合は100万円×40%=40万円を収益計上し,3年超5年以内に解約となった場合は100万円×20%=20万円を収益計上します。

 

また,賃貸借契約の中には,預かった保証金のうち「解約時月額賃料の2ヶ月分相当額を償却する」という内容も間々見受けられますが,この場合,「返還を要しないことが確定した時点において,その部分の金額を収益計上する」という原則によれば,解約するまで返還を要しない部分の金額が確定しないため,契約期間中は収益計上する必要は無いとも考えられますが,実務上は,契約締結時における月額賃料の2ヶ月分相当額を契約締結時において収益計上します。

これは,解約時賃料の2ヶ月分相当額が返還不要となることは契約締結時において明らかであるためであって,一旦は契約締結時における賃料の2ヶ月分相当額を収益計上し,その後,賃料の改定があるたびに差額について調整することになります。

 

ちなみに,借主側の会計処理ですが,保証金の償却部分は「建物を賃借するために支出する権利金等」として権利金や更新料とともに繰延資産に該当し,5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において,契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときは,その賃借期間)にわたって償却します。

(参考)法基通2-1-41,所基通36-7,ケーススタディ法人税実務の手引き(新日本法規)

 

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