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配偶者に対する相続税の軽減
配偶者に対する相続税額については,主に次の理由から軽減措置が設けられています。
・同一世代間での財産の移転であることが多く,遠からず次の相続が発生し,連続して相続税を納税する可能性が高い
・長年共同生活が営まれてきた配偶者に対する配慮
・被相続人の死亡後における生存配偶者の老後の生活保障
・遺産の維持形成に対する配偶者の貢献
1.制度の概要
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が,次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税は課税されません。
①1億6千万円
②配偶者の法定相続分相当額
例:相続人が配偶者と子の場合 → 1/2
例:相続人が配偶者と親の場合 → 2/3
よって,相続人が配偶者と子の場合において,遺産総額1億円の全てを配偶者が相続しても,1億6千万円以下ですので配偶者に相続税は課税されません。
また,相続人が配偶者と子の場合において,遺産総額10億円のうち5億円を配偶者が相続しても,配偶者の法定相続分(この場合は1/2)以下ですので配偶者に相続税は課税されません。
2.未分割の場合
この軽減措置は,配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっていますので,相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象にはなりません。
よって,仮に全ての財産が未分割の場合は,この軽減措置を適用せずに,法定相続分で分割があったものと仮定して相続税の申告及び納税をすることになります。
ただし,相続税の申告書の提出と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出した上で,その未分割であった財産が申告期限から3年以内に分割された場合には,その分割された財産は税額軽減の対象となります。
また,相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり,税務署長の承認を受けた場合で,その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときは,その分割された財産も税額軽減の対象になります。
3.この軽減措置の適用を受けるための手続
この軽減措置の適用を受けるためには,税額軽減の明細を記載した相続税の申告書又は更正の請求書に,戸籍謄本及び遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなどの配偶者の取得した財産が分かる書類を添付して提出する必要があります。また,遺産分割協議書の写しには印鑑証明書も添付する必要があります。
4.加算税との関係
相続などによって取得した財産の価額の合計額が基礎控除額以下であったため,申告期限までに相続税の申告書を提出していなかったところ,申告期限を過ぎてから新たに財産が発見され,その財産を加算すると基礎控除額を越えてしまうような場合があります。
このような場合には期限後申告書を提出することになりますが,期限後申告書であっても上記3の必要書類を添付すれば配偶者の税額軽減は適用されます。
ただし,期限内申告書を提出しなかった者に対しては無申告加算税が課税されることになっており,その税率は,自ら期限後申告書を提出した場合には新たに納付することとなった税額の5%,自らではなく税務署の調査等で指摘された後に期限後申告書を提出した場合には15%です。
また,申告期限までに納税していないことにもなりますので,加算税だけでなく延滞税も課税されます。延滞税の税率は,申告期限から2ヶ月までは年利3%前後,2ヶ月以降は年利9%前後です(いずれも銀行金利により変動します)。
配偶者に対する相続税額の軽減措置は,とても大きな軽減措置ですが,必要手続を誤ると思わぬ課税を受けることもありますので,充分に注意が必要です。