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相続時精算課税制度とは

2017-09-26(火) 08:51:34

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贈与税の課税制度には,原則的な課税方式である「暦年課税制度」と,一定の要件に該当する場合に選択することができる「相続時精算課税制度」の2つがあり,贈与者ごとに異なる課税制度を選択できます。

今回は,相続時精算課税制度をご紹介します。

 

1.制度の概要

相続時精算課税制度とは,原則として60歳以上の父母又は祖父母から,20歳以上の子又は孫に対し,財産を贈与した場合において選択できる贈与税の課税制度です。

贈与税と相続税をセットで考え,贈与時には,累計贈与財産2,500万円までは贈与税を課税せず,2,500万円を超えた場合にはその超えた金額に対して一律20%の贈与税を課税します。

そして,その後の相続時には,その贈与財産を相続財産に加算し,その加算した金額を基に一旦,相続税額を計算した上で,その相続税額から既に納税した贈与税を控除して残りがあれば納税するという制度です(贈与税を控除してマイナスとなった場合には還付されます)。

過去に贈与した財産も相続財産に加算して相続税額を計算し直す(相続時に精算する)制度です。

 

一旦,この制度を選択しますと,その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については,その選択をした年分以降全てこの制度が適用され,「暦年課税制度」へ変更することはできません。

例えば,父からの贈与につき相続時精算課税制度を選択した場合,翌年以降に父から贈与を受けた財産については全て相続時精算課税制度が適用され,父からの贈与については暦年課税制度へ戻ることはできません。

一方,母からの贈与については,相続時精算課税制度を選択するまでは,暦年課税制度を適用することができます。

相続時精算課税制度は,あくまでも贈与者(財産を贈与する人)ごとに選択することができます。

 

2.相続時精算課税制度の主な長所

①早期に多額の財産(2,500万円まで)を贈与税の課税を受けることなく贈与することができます。

相続時に相続税が発生しないと見込まれ,早期に次世代に財産を移転したい場合には特に有効です。

 

②過去の贈与財産を相続財産に加算する際には,贈与時の価額で加算します。

よって,値上がりすることがわかっている財産を贈与した場合は,相続税の節税となります。

 

③賃貸不動産などの収益を生む財産を贈与した場合には,贈与後の収益は受贈者のものとなりますので,贈与者の財産の増加を防ぐことができ,相続税対策となります。

 

3.相続時精算課税制度の主な短所

①自宅などを相続した場合に最大で80%も評価減となる「小規模宅地等の特例」が適用できません。

小規模宅地等の特例は,相続又は遺贈により取得した財産にのみ適用があり,贈与により取得した財産については適用が無いからです。

 

②不動産を相続した場合の登録免許税は0.4%ですが,贈与により取得した場合の登録免許税は2.0%です。

また,相続により取得した場合は不動産取得税の課税はありませんが,贈与により取得した場合は不動産取得税が課税されます。

 

③相続時精算課税制度を適用して贈与により取得した財産は,その後の相続時に物納することはできません。

 

相続時精算課税制度は,何億円もの資産を保有する資産家の相続対策には不向きですが,保有資産が自宅と金融資産のみであるなど,相続税が発生しないと見込まれる方にとっては,活用次第で相続対策になり得る制度であると言えそうです。