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路線価が付されていない宅地の評価方法
相続税や贈与税を計算する場合における宅地の評価の方法は,都市部(市街地的形態を形成する地域にある宅地)では路線価方式,それ以外では倍率方式によることになっています。
路線価とは国税庁が日本全国の路線(道路)に1㎡当たりの価額を付したものをいい,路線価方式とは,その路線価に地積を乗じて宅地を評価する方法をいいます(実際には個々の宅地の事情や利用形態により各種調整を加えます)。
例えば,評価しようとする80㎡の宅地が接している道路の路線価が500千円のとき,500千円×80㎡=4,000万円というように評価します。
しかし,国税庁も全ての道路に路線価を付しているわけではありませんので,「路線価の設定されていない道路のみに接している宅地」というのも結構な割合で存在します。
そのような宅地は,次の2つの方法のうちどちらかの方法で評価します。
①道路に接続する路線の路線価を基に画地調整を行って評価する。
②申出により特定路線価を設定してもらい評価する。
①の方法は,評価したい宅地と,その周りの宅地を合わせて評価し,その全体評価額から周りの宅地評価額を控除して間接的に評価する方法です。
②の方法は,納税義務者からの申出により,国税庁が個別に路線価を設定し,これを基に評価するという方法です。この個別に設定された路線価を特定路線価といいます。
どちらの方法で評価するかは納税義務者が判断することになりますが,国税庁としては①の方法で評価することを原則とし,それが実情に即していない場合には②の方法を認めるとしています。
実務上は何をもって「実情に即していない」と判断するかは非常に難しい問題ですので,どちらの方法を選択するかは個別に判断することになります。
特定路線価の申出をする場合は,「特定路線価設定申出書」に所定の事項を記載して,所轄税務署へ提出します。通常は1ヶ月程度で「特定路線価回答書」として,特例路線価が設定されます。
特定路線価の申出をして特定路線価が設定されますと,原則としてその特定路線価を必ず使用しなければなりません。
想定していたよりも特定路線価が高く設定されたからといって,①の画地調整を行って評価する方法によることはできません。
これに関する明文の規定はありませんが,国税不服審判所の裁決事例(H24.11.13裁決)によると,一旦,特定路線価が設定されますと,画地調整を行って評価する方法によることはできないと読み取れます。
「特定路線価を設定して評価する趣旨は,評価対象地が,路線価の設定されていない道路のみに接している場合であっても,評価対象地の価額をその道路と状況が類似する付近の路線価の設定された路線に接する宅地とのバランスを失することのないように評価しようとするものであって,(中略)このような趣旨からすると,特定路線価は,路線価の設定されていない道路に接続する路線及び当該道路の付近の路線に設定されている路線価を基にその道路の状況,評価しようとする宅地の所在する地区の別等を考慮して評定されるものであるから,その評定において不合理と認められる特段の事情がない限り,当該特定路線価に基づく評価方法は,(中略)画地調整を行って評価する方法より合理的であると認められる。」
路線価が付されていない宅地の評価は非常に難しい問題ですので,特定路線価の申出をするか否かを含め,慎重に対応したいところです。