HOME >BLOG

BLOG

セルフメディケーション税制と医療費控除について

2017-05-30(火) 13:17:05

カテゴリー:

平成29年1月1日より,医療費控除の特例制度である「セルフメディケーション税制」(以下,SM税制)が施行されました。今回はこの制度をご紹介します。

※セルフメディケーションとは,世界保健機構において,「自己の健康に責任を持ち,軽度な身体の不調は自己で手当てすること」と定義されています。

 

<制度の趣旨>

我が国のこれ以上の医療費の膨張を防ぐため,一部の市販薬を購入したときに所得控除を受けられるようにすることで,広く国民に健康診断を適正に受診させ,軽度な身体の不調は医療機関にかからずとも,市販薬等を使い自己で治すように促すことが目的です。

 

<制度の概要>

SM税制とは,健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う居住者が,平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に,自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る「特定一般用医薬品等購入費」を支払った場合に,その金額が1万2千円を超えるときは,その超える部分の金額(上限8万8千円)を総所得金額等から控除する,というものです。

尚,従来からの医療費控除との選択制で,併用は認められません。

 

健康の保持増進及び疾病の予防への取組とは,要するに予防接種や健康診断のことです。例としては以下のようなものがあります。

・健康保険組合や市区町村が実施する健康診断

・インフルエンザ等の予防接種

・勤務先が実施する定期健康診断(事業主検診)

・メタボ検診

尚,任意で全額自己負担で受診した健康診断は,SM制度の対象外です。

 

特定一般用医薬品とは,医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から,ドラッグストア等で購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)をいいます。

具体的な対象商品は約1,500品目あり,風邪薬から胃腸薬,貼付薬まで幅広く,厚生労働省のHPに一覧が掲載されています。

 

<従来の医療費控除との関係>

従来の医療費控除は,病気や怪我の治療又は療養に必要な医薬品の購入費用は控除対象となりますが,病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入費用は控除対象となりません。

これに対し,SM税制は,病気等の治療に限定せず,税制対象スイッチOTC医薬品の購入費用であれば控除対象となります。

 

SM税制は「医療費控除の特例」という位置付けのため,従来からの医療費控除との併用はできません。

よって,従来の医療費控除を適用した場合と,新しいSM税制を適用した場合とで,どちらを選択した方が有利となるかを計算する必要があります。

 

<適用を受けるための手続き>

従来の医療費控除と同様に,対象商品を購入したレシート等を確定申告書に添付又は提示する必要があります。レシート等には,次の5つの事項の記載が必要です。①商品名,②金額,③当該商品がSM税制対象商品である旨の記載,④販売店名,⑤購入日

 

また,SM税制は予防接種や健康診断を受診していることが要件の一つですので,次の証明書等を申告書に添付又は提示する必要があります。

①インフルエンザの予防接種又は定期予防接種の領収書又は予防接種済証

②市区町村のがん検診の領収書又は結果通知書

③職場で受診した定期健康診断の結果通知

④特定健康診査の領収書又は結果通知書

⑤人間ドッグやがん検診を始めとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知書