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生命保険を活用した相続税対策(基本)

2016-12-07(水) 09:27:56

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相続税対策として生命保険を活用するということを耳にしたことがあると思いますが,具体的にどういうことなのか,代表的な事例を二つご紹介します。

 

生命保険金の非課税枠の活用

被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で被相続人が保険料を負担していたものは相続税の課税対象となりますが,この死亡保険金のうち受取人が相続人(相続を放棄した人・相続権を失った人は除く)であるものは「500万円×法定相続人の数」まで相続税が課税されません。

 

父・母・子供2人の4人家族で父が亡くなった場合の法定相続人は3人(母と子供2人)ですので,この場合は500万円×3人=1,500万円まで生命保険金は相続税非課税となります。

 

この4人家族の主な財産が自宅と銀行預金2,000万円としますと,このまま何もせず父が無くなると自宅も銀行預金2,000万円も相続税の課税対象となります。

 

一方,銀行預金2,000万円のうち1,500万円を保険料一時払いの生命保険に事前に加入していた場合,保険金として受け取った1,500万円は相続税非課税となりますので,相続税の課税対象は自宅と銀行預金500万円だけとなります。

 

既に加入している生命保険契約を確認し,相続税の非課税枠を使い切っていない場合には,銀行預金の一部を生命保険に振り分けると相続税の節税になります。

 

現金贈与して生命保険に加入する保険料贈与プラン

まずは生前贈与のお話から。生前贈与には贈与税が非課税になる特例がいくつか用意されていますが,住宅取得用だったり教育資金だったり使途が特定される特例がほとんどです。

 

よって,一番使い勝手がいいのは年間贈与金額110万円までは贈与税非課税という通常の暦年贈与です。非課税枠は小さいですが使途が特定されず,他の特例と違って毎年使えるところが長所です。

 

例えば,先の4人家族の場合,父から母と子供2人に毎年120万円ずつ現金贈与したとします。その場合の贈与税の計算は以下の通りです。

(120万円-基礎控除110万円)×贈与税率10%=1万円

1万円×3人=3万円

 

この贈与を毎年実行すれば,5年間で1,800万円(120万円×3人×5年)の現金を贈与税15万円(1万円×3人×5年)で移転できます。10年間実行しますと3,600万円の現金贈与に対し贈与税は30万円です。

 

このように細く長く活用することで効果を発揮する通常の暦年贈与ですが,現金を受け取った子供が浪費しないか心配だという意見があります。

 

そこで登場するのが生命保険です。贈与により受け取った現金を原資とし,子供が契約者・父親が被保険者・子供が保険金受取人となる生命保険に加入します。

 

将来的に父が亡くなった際には子供が生命保険金を受け取ります。受け取った生命保険金は相続税ではなく所得税の課税対象となりますが,それまでに支払ってきた保険料は控除できますし,所得税の課税対象といっても一時所得という分類になり課税対象は1/2に軽減されますのでかなり有利です。

 

受け取った保険金の使途は自由ですから相続税の納税に充当したり代償交付金として使用したりできます。

 

このように,生前贈与と生命保険を組み合わせた「保険料贈与プラン」は,シンプルでわかりやすく,且つ,実行にあまり手間がかからないが確実に効果があるという点で人気があり,多くの方が実行している相続税対策です。

 

尚,現金贈与を実行する場合には,父親の口座から子供の口座に振り込みの方法により行うこと,贈与契約書を毎年作成し保管すること,基礎控除を超える金額を贈与し毎年贈与税の申告を行うこと,通帳・印鑑・カード等は子供が保管すること(未成年のうちは親でも可)等の注意点があります。

 

ちなみに,贈与した現金を子供名義の預金口座に入金したものの,管理は親が行っていて親が自由に引き出せるような場合は贈与そのものが否認されますので要注意です。