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法人税における海外渡航費の取扱いについて
海外渡航費は高額となることが多く,随行者が必要な場合や,観光を伴うこともあり,税務調査においては常に確認されるポイントの一つです。
まずは大原則ですが,法人税基本通達(以下,法基通)9-7-6では次のように規定しています。
法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費は,その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり,かつ,当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り,旅費としての法人の経理を認める。したがって,法人の業務の遂行上必要とは認められない海外渡航の旅費の額はもちろん,法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であってもその旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額については,原則として,当該役員又は使用人に対する給与とする。
続いて法基通9-7-7が業務の遂行上必要な海外渡航の判定について次のように規定しています。
法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは,その旅行の目的,旅行先,旅行経路,旅行期間等を総合勘案して実質的に判定するものとするが,次に掲げる旅行は,原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しないものとする。
- 観光渡航の許可を得て行う旅行
- 旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行
- 同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの
一般的に海外渡航費が税務上問題となるのは役員が海外出張した場合です。家族旅行は論外として,同業者や取引先等と海外視察と称して海外旅行をし,その費用を法人の経費として計上したのを否認されるケースが多いです。
役員の場合は海外渡航費が役員給与と認定されますと損金不算入となる上に源泉所得税の徴収漏れという問題も生じます。
次に,同伴者の旅費については法基通9-7-8が規定しており,要約しますと次のような取扱いになります。
法人の役員が親族又は社外の者を同伴し,その同伴者の旅費を法人が負担したときは,その旅費はその役員に対する給与とする。
ただし,その同伴が例えば次のように,明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは,この限りでない。
- その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合
- 国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合
- その旅行の目的を遂行するため外国語に堪能な者又は高度の専門的知識を有する者を必要とするような場合に,適任者が法人内にいないためその役員の親族又は臨時に委嘱した者を同伴するとき
中小企業で配偶者を海外に同伴する最も多いケースは,取引先役員等の海外挙式に夫婦で招かれた場合です。国際会議ではありませんが海外挙式に夫婦で招かれたのだからその渡航費用は全額法人負担としがちですが,税務調査で認められない場合も多々あります。
個別要素が強い事案ですので一概に判断できませんが,税務調査で否認されないために配偶者同伴の必要性を説明できるようにしておいた方が良さそうです。
海外渡航費については課税当局とのトラブルを避けるためにも,海外出張旅費規程を定めて,役職ごとに出張手当,支給する宿泊費,移動に利用できる交通機関等を明確にしておきますと一定の効果があります。
また,出張報告書を作成し,出張期間・渡航先・出張の目的・現地でのスケジュール・訪問先・面会者・渡航費用の明細・写真などを詳細に記録しておきますと,課税当局とのトラブルを回避できる場合が多いです。