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一般社団法人を活用した不動産の法人化の是非

2016-04-07(木) 20:40:13

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近年,不動産オーナーの相続対策の手法として「一般社団法人を活用した不動産の法人化」を見聞きするようになりました。株式会社を活用した場合と何が違うのか,メリット・デメリットを交え,以下,概略をご説明します。

 

<一般社団法人とは>

一般社団法人とは,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立される法人です。最大の特徴は出資者が存在しないことです。株式会社のような持分を有する株主は存在せず,社員は出資者ではなく,単なる決議機関です。株式会社との主な相違点は以下の通りです。

 

  一般社団法人 株式会社
設  立     社員2名以上で設立  株主1名以上からの出資で設立
事業内容 制限なし 制限なし
持  分 無し あり
配  当 不可

※社員とは従業員という意味ではありません。

 

<相続税がゼロになるという誤解>

株式会社の株主が亡くなりますと,その株主が所有している株式が相続税の課税対象となりますが,一般社団法人の場合には株式や出資という概念が無いため,その社員や理事が亡くなっても当該一般社団法人が所有している財産に相続税は原則として課税されません。

これを理由に,一般社団法人を設立して自分が理事に就任し,個人で所有している不動産等の財産を一般社団法人に移転させれば相続税が一切かからないと喧伝している専門家や,それを信じている納税者もいるようですが,それは全くの誤解です。世の中そんなに甘くありません。

一般社団法人自体で適正に資金を準備し,適正価格で不動産を購入すれば問題ありませんが,節税を意図した多くの場合,実質的無償で不動産を移転しようとしますので,その場合には以下のような課税関係が生じます。

 

まず,不動産を移転する段階で,不動産を無償譲渡した個人に対し譲渡所得税が課税され(所法59),不動産を無償で受け入れた一般社団法人には,法人税の受贈益課税がなされます(法法22②)。

次に,一般社団法人に不動産を贈与等したことにより,その代表者等の個人の贈与税又は相続税が不当に減少したと認められる場合には,その一般社団法人を個人とみなして贈与税又は相続税が課税されます(相法66④)。

 

そして,この「不当に減少した」か否を判断する際に,「運営組織が適正であること」が重要なのですが,「組織運営が適正である」と認められるためには,理事は6人以上,監事は2人以上(理事の親族は実質不可),名目役員に給与を支払っていないこと,等の要件を満たす必要があり,個人の節税策として利用するには簡単でない要件が複数存在します(相個通15)。

 

<メリット・デメリット>

上記の通り,無償で財産を移転しますと一般社団法人であっても株式会社の場合と同様に課税上の問題が生じますが,適正な手段及び価格で財産を移転した場合にはメリットもあります。

まず,賃貸不動産等の収益を生む財産を移転した場合において,移転後の税引後利益がどんなに膨らんでも,そこに相続税は課税されません。

次に,仮に個人として破産した場合であっても,一般社団法人が所有している財産は個人のものではありませんので,何ら影響ありません(いわゆる倒産乖離)。

一方,前述した税務以外のデメリットとしては,どんなに利益(内部留保)が溜まっても配当できません点が挙げられます。

また,受け入れた基金の返還には一定の制限がありますので,個人としては実質的に財産権を放棄したことと近くなります。

 

<結論>

不動産の法人化を検討する場合,現行法令上は,株式会社や合同会社で対応したほうが良さそうです。