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借り上げ役員社宅
中小企業の社長が自宅を賃借する場合,「個人で借りるか」または「法人で借りるか」選択できます。
・個人名義で借りる場合
新規賃借するマンションの家賃が30万円として,この家賃を支払った後の手取り収入が今までと変わらないように役員報酬を増額します。
増額前の役員報酬が1,000万円で所得税住民税を合わせた税率が33%の場合,約537万円の役員報酬増額が必要となります。(※)年間家賃360万円÷(1-0.33)=約537万円
・法人名義で借りる場合
法人名義で借りて,社長が居住する場合,社長は法人に社宅家賃を支払う必要があります。
ではいくらの社宅家賃を支払えばよいかと言いますと,所得税基本通達にその算定方法が規定されています。
1.小規模住宅(床面積が99㎡(木造は132㎡)以下)の場合
この場合の社宅家賃月額は次の①~③の合計額です。
①家屋固定資産税課税標準×0.2%
②土地固定資産税課税標準×0.22%
③家屋床面積坪当たり12円
弊事務所至近(東京都港区外苑前)80㎡程度のマンションの場合,上記計算ではおおよそ5~8万円くらいです。
一方,世間相場の家賃はおおよそ30万円前後です。
2.上記床面積を超える住宅の場合
この場合の社宅家賃月額は次の①~③の合計額です。
①家屋固定資産税課税標準×10%(木造は12%)×1/12
②土地固定資産税課税標準×6%×1/12
弊事務所至近(東京都港区外苑前)150㎡程度のマンションの場合,上記計算ではおおよそ20~30万円くらいとなり,小規模住宅の数倍になります。
一方,世間相場の家賃はおおよそ80万円~100万円前後です。
3.豪華社宅の場合
プールや茶室等の設備があるような豪華社宅の場合は,上記1及び2のような算定式はなく,世間相場の家賃となります。
港区外苑前にある80㎡程度のマンションを月額家賃30万円で法人名義で賃借し,そこに社長が居住した場合の本人負担は5~8万円程度で済み,差額22~25万円に対して所得税課税があるわけでもありませんので,社長が自宅を賃借する場合は法人名義のほうが圧倒的に有利であると言えそうです。
尚,上記家賃の算定方法は,借り上げ社宅でも法人所有の建物でも同じです。
自社所有であればともかくとして,他人から賃借している建物の固定資産税課税標準なんてわからない,とお考えになる方もいらっしゃるかも知れませんが,賃借人であっても賃貸借契約書を市役所等に持参すれば,賃貸物件の固定資産税課税台帳を閲覧できます。
ちなみに上記のような考え方は役員社宅だけでなく,従業員社宅の場合にも当てはまります。
しかも従業員社宅の場合の家賃は上記1の半額でよいことになっています。
月額家賃10万円のマンションに居住している社員の給与を9万円減らし,マンションを法人名義に変更して家賃は法人から振り込むことにし,差額1万円を社員からの家賃徴収分とすれば,社員の手取り収入はほぼ変わらないまま給与額面を下げることができますので,社員の所得税住民税を減らすことが可能となります。
注意事項としては,個人名義から法人名義に変更する際に,物件によっては新規契約扱いとして家賃1か月分程度の手数料を要求されることがあります。