HOME >BLOG
老人ホームに入所する場合の小規模宅地等の特例の注意点
相続が発生した場合において,被相続人が亡くなる直前まで居住していた宅地や事業で使用していた宅地については,一定の要件のもとに,その土地の80%或いは50%を課税の対象から除いてあげますという特例があります。
これを「小規模宅地等の特例」といいます。
例えば,夫名義の土地建物(土地の時価1億円と仮定)に夫婦二人で居住していて夫が亡くなった場合に,この土地建物を妻が相続するケースでは,相続税の課税価格に算入される土地の価格は2千万円です(80%減額)。
減額される額が大きいですので,この特例が適用できるか否かで相続税額はかなり変わってきます。
昨今,人生の晩年を老人ホームで過ごす人も増えておりますが,この場合,小規模宅地等の特例はどのように取り扱われるのでしょうか。
一般的に,居住していた建物を離れて老人ホームに入所したような場合には,それに伴い生活の拠点も移転したものと考えられるため,老人ホームに入所した時点で自宅は自宅でなくなります。
よって,「小規模宅地等の特例の適用は無い」とも考えられます。
しかし,個々の事例のなかには,その者の身体上又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため居住していた建物を離れて老人ホームに入所しているものの,本当は自宅での生活を望んでおり,いつでも居住できるように自宅を維持管理しているケースもあり,このようなケースについては病気治療のため病院に入院した場合と同様な状況にあるものと考えられる場合もありますから,一律に生活の拠点を移転したものとみるのは実情にそぐわない面があります。
そこで,老人ホームに入所するため,それまで居住していた建物を離れることになった場合においても,次に掲げる状況が客観的に認められる場合には,それまで居住していた建物の敷地は,相続開始の直前においてもなお居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして差し支えないものとされます。
(1)被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため,老人ホームへ入所することとなったものと認められること。
(2)入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
従いまして,老人ホームへ入居後に自宅を他者へ貸付けたり,もともと居住していた親族以外の居住の用に供したりしますと,80%減額の適用が無くなりますので注意が必要です。
尚,以前は次の要件も充足しないと老人ホーム入居後の自宅に小規模宅地等の特例を適用することはできませんでしたが,平成26年1月以降は上記2つの要件を充足すれば良いこととなりました。
(1)老人ホーム入居後も本人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていること。
(2)その老人ホームは,本人又はその親族によって所有権が取得され,あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。
よって,今は終身利用権付きの老人ホームであっても問題ありません。