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非嫡出子の相続分1/2規定は憲法違反
結婚していない男女間に生まれた子供(非嫡出子・婚外子)の遺産相続分を,嫡出子の半分と定めた民法の規定が,法の下の平等を保障した憲法に違反するか否かが争われた家事審判の特別抗告審で,最高裁大法廷は,当該規定を「違憲」とする初判断を示しました。
1995年にも同様の事案がありましたが,このとき最高裁は合憲と判断していますので,判断を変えたことになります。
1995年に合憲とした最高裁決定の概要は次の通りです。「日本では結婚し夫婦間で子をつくる考え方を尊重する一方で,婚外子は夫婦間の子の半分の相続分を認め保護する。民法の当該規定は,法律婚の尊重(国の考え方)と婚外子の保護(個の尊重)の調整を図ったものだから,相続分に差があっても合憲である。」
今回,違憲とした最高裁決定では,「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきた(中略)。法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,(このような)認識の変化に伴い,(法律婚の)制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている(中略)遅くとも2001年7月当時において(相続分に差のある民法の規定は)憲法に違反していた」と判事しました。
1995年当時は,法律婚尊重と婚外子保護の調整がより大切でありましたが,社会が変化し,遅くても2001年7月時点では,それよりも個人の尊重・個人の平等のほうが大切になった,ということでしょうか。
今回の最高裁決定に対する評価は今後色々なところで議論されることになり,早晩,民法の当該規定は改正されることになると思いますが,今後の相続実務においては,民法が改正されるまでの間であっても,当該決定を無視するわけにはいかなくなります。
すなわち,民法が改正されるのを待つまでもなく,2001年7月以降に発生した相続で現段階でまだ遺産分割が未確定のもの,あるいは今後発生する相続については,今回の最高裁決定を踏まえ,嫡出子であっても非嫡出子であっても相続分は平等である,ということになります。
尚,今回の違憲判断が他の同種の事案に与える影響について,「先例として解決済みの事案にも効果が及ぶとすれば,著しく法的安定性を害することになる」として,過去に決着している事案には影響を及ぼさないとしています。
よって,既に遺産分割が確定している事案について今回の最高裁決定を理由とする遺産分割のやり直しはできません。
<追記>
本件に関しては国税庁が,「相続税法における民法第900条第4号ただし書前段の取扱いについて(平成25年9月4日付最高裁判所の決定を受けた対応)」を公表していますので,そちらも参考にして下さい。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/index.htm