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こんな贈与はレッドカードです。
父Aは,昭和60年3月14日,自己が所有する不動産を子Xに贈与するため,公正証書を作成しました。
当該公正証書には,
①父Aが所有する不動産を子Xに贈与し,子Xはこれを受諾した。
②父Aは本件不動産を本日引渡し,子Xはこれを受領した。
③父Aは子Xから請求があり次第,本物件の所有権移転登記をしなければならない。
④登記申請に要する費用は子Xの負担とする。
と記載されていました。
平成5年12月13日,子Xは父Aから本件不動産について,「昭和60年3月14日贈与」とする所有権移転登記を受けました。
そこで,Y税務署長はXに対し,平成7年になって贈与税の課税処分を行いました。
Xは課税処分に不服があるとして提訴しました。
本件の問題の所在は,不動産を贈与した時期がいつか,ということです。
国が課税処分をする場合,7年までしか遡れません。贈与の時期が昭和60年なら課税処分は違法となり取り消されますが,登記をした平成5年なら課税処分は適法ということで贈与税が課税されます。
さて,答えは?
言うまでもなく,贈与税とは,贈与により「財産を取得した時」に課税されますが,この贈与の時期については課税実務上トラブルとなるケースが後を絶ちません。
そこで,相続税基本通達では,贈与による財産取得の時期の原則について,「書面によるものについてはその契約の効力の発生した時,書面によらないものについてはその履行の時」と定めています(相基通1・1の2共-7(2))。
また,このような取扱いのみでは,親族間贈与のようにその時期が必ずしも明確にならない場合もあるということで,同通達は更に,「所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1・1の共7の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において,その贈与の時期が明確でないときは,特に反証のない限りその登記又は登録があったときに贈与があったものとして取り扱うものとする。」と定めています(相基通1・1の2共-10)。
この取扱いは判例上も概ね支持されています。
よって,本件については当然に課税処分は適法ということになり,贈与税が課税されました。(名古屋高裁平成10年12月25日判決,訟月46巻6号3041頁,税資239号1153頁)
課税の問題を考えるとき,「常識」を基準に考えると概ね間違いありません。税法は基本的には公平にできています。「常識」で考えて,おかしいな,変だな,と思えば大概その判断は合っています。もっとも,人によっては常識の範囲が異なるので,そこが実務上の難しいところでもあるのですが・・・。