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更新料裁判
更新料裁判とは,マンションやアパート,事務所等の不動産賃貸借契約において,更新料を支払うと定めた条項が消費者契約法に照らし,違法であるか否かが争われた裁判です。
消費者契約法第10条は,「消費者の利益を一方的に害する契約は無効」と定めており,更新料がこれに該当するか否かが争点となっていました。
下級審での判断は以下の通り割れており,更新料の支払いを定めた条項が有効であると判断したものもあれば,無効と判断したものもありました。
東京地裁H17.10.26判決 有効
京都地裁H20.01.30判決 有効
大津地裁H21.03.27判決 有効
京都地裁H21.07.23判決 無効
大阪高裁H21.08.27判決 無効
京都地裁H21.09.25判決 無効
大阪高裁H21.10.29判決 有効
大阪高裁H22.02.24判決 無効
そして,大阪高裁での3つの裁判は全て上告され,最高裁がどのような判断をするのかが注目されていましたが,平成23年7月15日,最高裁は「更新料が高額過ぎなければ有効」とする初判断を下し,借主側の敗訴が確定しました。
これにより,貸主側はこれまで通り更新料の条項を入れておくことができるようになりましたが,仮に貸主敗訴になっていた場合,貸主にとっては経営上かなりの痛手になっていたものと思われます。
といいますのは,最高裁での借主側の主張は,更新料の支払いを定めた条項が無効であることを前提に,更新料の支払拒絶を主張するだけではなく,過去に支払った更新料の返還をも求めていたからです。
もしも最高裁が更新料の支払い条項を無効と判断していたならば,全国で同様の訴訟が乱立し,賃貸事業は大混乱になっていたことでしょう。
そういった意味において,この最高裁判決は大変意義のあるものと言えそうです。
また,更新料裁判に類似する訴訟として取り上げられる敷引裁判ですが,こちらも平成23年3月24日の最高裁判決に続き,同年7月12日の最高裁判決でも敷引有効との判断が下されました。
これにより,借主退去時に貸主が敷金から一定の金額を控除する敷引条項(関東ではこれを「保証金の償却」といいます。)は,消費者契約法に違反せず,原則有効であるとの見解が確立されたものと言えそうです。