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今後の税務調査
現在、国会で審議中の税制改正法案の中に、税務調査手続きの明確化があります。
具体的には以下の通りです。
①正確な事実の把握を困難にする等のおそれがある場合を除き、原則として、次の事項を文書で
予め通知する。
・調査の開始日時と場所
・調査目的
・調査対象税目と課税期間
・調査対象となる帳簿書類その他の物件
・その他必要事項
②税務調査終了時の説明責任の明確化を図るため、更正、決定すべきと認められる場合と
そうでない場合のそれぞれについて、通知書を交付する。
③更正、決定等の処分については、原則として理由附記を実施する。
これらの改正は、納税者の権利保護の一環として予定されているようですが、なかなか難しい問題を
含んでいます。
まず、①についてはその有効性に疑問があります。
現在の税務調査は、たいていの場合、予め課税当局から税務調査したい旨の連絡が税理士にあり、
クライアントと税理士と課税当局とで日程調整した上で実施されます。
調査対象は法人であれば法人税と消費税と源泉所得税、個人であれば所得税と消費税が主で、
調査対象期間もたいていは過去3年ですが、これらを紙に書いて事前に通知したところで、あまり
意味はないでしょう。
調査対象となる書類も同様です。
②については修正申告の慫慂との関係で、やはりその有効性に問題があります。
現在の税務調査では、過去の申告に誤りが発見された場合であっても、課税当局が更正処分を
することはほとんどなく、ほとんどのケースで納税者に修正申告を慫慂してきます。
つまり、更正処分することがほとんどない現実の中で、それを通知書として交付する機会はほとんど
ないことが予想されます。
③も②と同様です。
実効性の乏しい改正をして、税務調査の事務手続きを煩雑にすれば効率が悪くなるだけでなく、
無駄な歳出を増やすことにつながるだけです。
もう少し意味のある改正を望みます。