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給与と報酬の区分をめぐる問題

2010-09-17(金) 16:00:04

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社会保険の負担が大変だとか、源泉徴収事務が煩雑で面倒だ、といった理由から、これまで社員に支払っていた給与を、業務請負契約などの報酬に変更して支払おうとする会社がたまにありますが、これは一歩間違うと痛い目にあいます。

給与とは 「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得」 と規定され、いわゆる雇用契約に基づくものです。

一方、報酬とは 「農業、漁魚・・・その他のサービス業のほか、対価を得て継続的に行う事業から生ずる所得」 と規定され、いわゆる請負契約に基づくものです。

この場合において、雇用契約に該当するのか請負契約に該当するのかは、実態に即して判断され、会社の都合で決まるものではありません。

区分の基準としては次の二つが重要視されます。

①非独立性

 例えば、まだ引き渡しを終えていない完成品が不可抗力のため滅失してしまった場合において、その者が権利

 として報酬の請求をなすことができるか否か。できる場合には給与としての要素が強いと思われます。

②従属性

 例えば、契約の内容から他人の代替が可能である場合には、報酬としての要素が強いと思われます。

 また、仕事の遂行に当たり、個々の作業について指揮監督を受けずに自己の裁量において業務を行う場合に

 は事業としての要素が強いと思われます。

どちらも所得税を源泉徴収する必要がありますが、給与の場合はその支払金額と扶養者の数に応じ、一覧表に規定する所得税を徴収します。

一方、報酬の場合は、たいがいの場合は支払金額の10%の所得税を徴収します。

そして、もっとも問題となるのが消費税です。

会社が決算で納税する消費税は、売上に係る預かり消費税から、支払いに係る仮払い消費税を控除することによって算出するのですが(仮払い消費税の方が大きかったら還付となります)、この場合において、給与は 「非課税仕入」に該当し、控除することができません。

一方、報酬は 「課税仕入」 に該当し、控除することができます。

両者の差は、単純に考えれば給与の支払金額の5%ですから、かなり違うことになります。

当然、控除することができる報酬の方が納税額は少なくなるのですが、それを目当てに会社の判断で給与に該当するものを報酬として消費税の計算を行うと、当然のことながら税務調査で否認され、過少申告加算税や延滞税などの余計な税金まで課せられてしまいます。

あくまでも実態で判断するものであって、会社の都合で判断するものではありませんので、注意が必要です。